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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 260

「えっ?」

加納がそう思った時にはオグリキャップがゴール板を先頭で駆け抜けていた。
スタンドが騒めき、その後歓声に変わる。

「どこから来たんだ…?」

完璧な競馬をしたつもりだったが、結果は負け。
加納はまだ現実ではない気がして首をひねった。

「うちのもいい競馬ができたけど、化け物が1頭いたね」

ボールドノースマンの柴原もそう言って笑うしかなかった。

そのオグリキャップの圧倒的な豪脚をスタンドで見ていた男がいた。
彼の名は大崎巨山。
人気テレビ司会者であり、12AMやクイズジョッキー等の大人気番組の司会で一世風靡しているだけでなく、馬主でもあり競馬にも造詣が深い人物だ。
彼の競馬の造詣の深さを示す言葉が『府中の千八展開要らず』と言う言葉で、それは競馬ファンの中で定説になりつつある。

その競馬歴の長い巨山ですらオグリキャップの豪脚に度肝を抜かれていた。
彼が評した府中の千八で行われた毎日王冠で、破天荒な勝ち方をした馬を目にしたからだ。

「毎日王冠で古馬の一線級を相手に、スローペースを後方から大外廻って、一気に差し切るなどという芸当は、今まで見たことがない」

記憶に無い・・・
確かに誰の記憶にも無いレースだった。

「どうやらオグリキャップは本当のホンモノの怪物らしい」

巨山は楽しそうに周囲にそう漏らしてスタンドを後にする。
天皇賞が楽しみだと付け加えて。


勝ったオグリキャップを迎えた瀬戸内調教師はニコニコだった。

当初、佐原祐志に笠松からの移籍馬を預かって欲しいと言われた時は面倒だと思っていた。
ただ、彼の義父の佐原代議士とは昵懇の付き合いであり、渋々だが受け入れた。
そんな瀬戸内だったが、入厩した直後から度肝を抜かれた。
軽めに流して見ろと命じた調教助手が疲労困憊で引き上げてきて一言・・・

「テキ・・・コイツ化け物ですわ・・・」
「どう言う事や??」

指示通り軽く流した調教助手が、後半少し追ってみると・・・
オグリキャップが本気の走りを見せたのだ。
それは今まで彼が乗ってきた馬とは次元の違う豪脚。
振り落とされないように必死でしがみつくので手一杯だった。

その後、瀬戸内も調教を確認して納得した。
どうやらオグリキャップは怪物らしいと。


更に祐志からはこんな注文も来た。
相原澪を乗せろと・・・

澪の事は女ながら若手の天才なんて持て囃されているから知ってはいた。
ただ、関西では珍しく瀬戸内は厩舎と馴染みのベテランや苦労人達を優先して使う傾向にある。

若手を信用していないのではなく、華々しい天才と言う連中が何となく好きで無いのだ。
そんな古風な所がある瀬戸内だが、佐原家からの頼みとあれば聞かない訳も行かない。
そう言う事で澪を主戦としたのだが、それはここまでのレースでは大当たりだったようだ。

「よくやったな!」
「ありがとうございます!・・・彼が自分で届く所を見せたかったみたいです」

そう言葉を交わし合う2人。
そして・・・

「奴にやな?」
「ええ、天皇賞で彼に挑む為かなと」

2人の視線の先には既に次のレースが映っていたのだった。



オグリキャップの衝撃的な勝利を受けて次週。
秋華賞が行われる。
オークス馬プラニフォリアと桜花賞馬オータムリーヴス。
1番人気はプラニフォリアでオータムリーヴスがそれに続く。
オークスではやや距離が長い感があったオータムリーヴスだが、2000mなら適距離範囲だ。

オータムリーヴスの秋初戦、ローズステークスは3着に敗れた。
主戦の悠曰く前走は本調子に程遠い出来で、それでも地力で3着に来れたとレース後寛子に話していた。
今回は調教からすこぶる好調で巻き返しを図る。

プラニフォリアは紫苑ステークスを快勝した。
こちらは休み明けから仕上がりも良かったがまだまだ上積みはあると奥原も的家も自信を見せる。

桜花賞馬とオークス馬の一騎打ち。
ファンはそれを期待していた。


レースはキャッチミーがある意味名前通りの飛ばし気味の逃げを打つ。
澪鞍上のシヨノロマンは好位グループ。その後ろあたりにオータムリーヴスが位置する。
プラニフォリアは中団よりやや後方で、アラホウトクと並走。
その後ろにタマモクロスの妹、ミヤマポピーと言う展開。

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