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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 259

4コーナーを回り最後の直線へ。
マイネルダビデにトウショウサミットが並びかけ、ダイナアクトレスがさらに迫る。
追い比べがヒートアップする。

先に動いてしまったウインドストースが苦しくなる。
ダイナアクトレスは今日は反応があまり良くない。
代わって先頭に立つのはボールドノースマン。
鞍上の激励に応えるとそのままリードを広げようと突き抜ける。
帰国後本調子ではなかったとはいえ函館でシリウスシンボリに勝った上コースレコードまで記録した力は伊達ではなかった。

しかしそんな上がり馬にヒタヒタと迫る芦毛馬の姿があった。

オグリキャップだ。
だが、余りにも後ろ過ぎる上に大外。
誰もが届かないと思うぐらいに・・・

そうなったのは、少し前を走っていたシリウスシンボリの存在。
日本に帰ってきて久々にコンビを組んだ加納。
ヨーロッパでは連戦連敗で夢敗れて帰ってきた感があるシリウスシンボリだったが、加納はここに来て調子を上げているだけにまだ挽回できると言う自負があった。
発走前に荒ぶったのも、むしろ調子が良いのの表れと捉えていた。

それだけに勝ちたい。
いや、相手が怪物と言われていようが、今のシリウスシンボリなら勝てなくは無いと思っていた。
故にオグリキャップの前を走るのも戦術。
巧みに他馬を使ってブロックし、オグリキャップの進路を奪ったのだ。
そして自分は3コーナーから徐々に進出。
先頭集団を射程に捉えて万全の状況で4コーナーを回る。

その間、オグリキャップはブロックを抜け出すのに苦労し、更に大外を回され、いくら府中の長い直線でも届かないのではと言うぐらいのロスとなっていたのだ。

それでも猛然と伸びてくるオグリキャップ。
まるでロスなど関係ないかのように前と、内との差をどんどん詰めてくる。

負けじとシリウスシンボリも馬場の真ん中を通って伸びる。
内のボールドノースマンの柴原は完璧な競馬が出来て、これは楽勝すらあるのでは、とも思っていたが外からやってくる2頭の姿に
「そんなに甘くはないんだな」
と思わされる。

特にシリウスシンボリの加納にとって、これは完勝の流れだ。
シリウスシンボリも瞬発力でダービーを制覇した馬であるし、前走は負けたものの瞬発力に陰りは無いのは確認できた。
もしかするとタマモクロスの鬼脚ですら対抗できるのではと密かに思い描いていた。
それだけに、ここで差し切って勝ち、タマモクロスに堂々と対決したい。
先頭と並んだ時に、そんな事を思い描く加納は勝利を確信したのだった。

だが・・・

残り200m。
澪の鞭がオグリキャップに入った。

これ以前にオグリキャップにゴーサインを出した澪だったが、オグリキャップはゆっくりとしか加速していなかった。
あれだけ追い上げながら、オグリキャップは本気で無かったのである。
本気のオグリキャップの脚を知る澪は鞍上でヤキモキするが、ふとある事に気づく。
オグリキャップはまだ仕掛け所でないと思っているのだと・・・

故にここまで澪は追っていなかったのだ。
そしてここぞで鞭を入れた瞬間・・・
オグリキャップが跳んだのだ。

圧倒的・・・
圧倒的かつ暴力的な加速。

まるで他馬が止まったかのように次々と抜き去っていく。

同時に加速していたフレッシュボイスが置いていかれる。

「マジか?!」

鞍上の田沢が思わず叫ぶ。
末脚勝負なら現役最高峰と言われるフレッシュボイスがついていけない末脚なんて体験した事が無かった。
馬にとってもショックだったのか、フレッシュボイスが萎えて行くのを感じた田沢が、彼にしては珍しくレースを諦めてしまう程だった。

そして、先行から粘るダイナアクトレスも一気に交わされ、鞍上の岡江が目を見開く。
彼もオグリキャップを興味深く見ていた1人だが、牡馬とやりあっても粘り切れるダイナアクトレスが粘る間も無く抜かされるのは予想外過ぎた。

「なんだあれは?!」

冷静な岡江からもそんな声が漏れたぐらいだった。

そして・・・

勝利を確信していた加納。
そしてシリウスシンボリ。
ゴールはもうすぐそこ。
脚色に衰えは無い。

だが、外側から灰色の馬体が加納の視界の隅に映る。
まさか・・・
横に目をやった瞬間、既に交わされていた。
シリウスシンボリの加速すら凌駕する加速で並ぶ間も無くだ。

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