PiPi's World 投稿小説

駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 256
 258
の最後へ

駆ける馬 258

特にウィンドサッシュの弟、サッカーボーイがマイル路線に向かうと言う事で、ここを勝って姉弟対決を万全な体勢で挑みたいと言うのもあった。
当然記者からもそんな質問が多く飛ぶが、奥原も『楽しみにしてください』とそれを意識するようなコメントを出していた。

そんな中で行われたスプリンターズステークス。
中団後方から直線のみで差し切ったウィンドサッシュ。
弟の末脚が『弾丸シュート』と呼ばれるのと変わらぬ瞬発力で勝って見せたのだ。

これで次走はマイルチャンピオンシップ。
そして調子によっては暮れに香港で走らす事も視野に入ったのだ。


その次週。
京都大賞典ではプチソレイユが逃げ切り勝ち。
スローな展開が上手くハマった勝利だった。
次走はエリザベス女王杯に向かう事となる。

そして毎日王冠。
オグリキャップが満を持して登場。
相手はダイナアクトレス、フレッシュボイス、ランニングフリー、レジェンドテイオーと歴戦の古馬達。
そこに欧州帰りのシリウスシンボリも加わる。

破竹の連勝街道を歩み続けるオグリキャップは大幅なメンバー強化のこのレースでも堂々、抜けた1番人気に推される。
それに続くのが女傑ダイナアクトレスで、函館でシリウスシンボリを破ってコースレコードまで決めたボールドノースマンがそれに続いた。

古馬相手でも前走同様落ち着き払った堂々としたパドック周回を見せるオグリキャップ。
おとなしいのに、乗ってみるとゾクゾクするんだよな、と澪はいつも不思議な感覚を受ける。
馬場入りの足取りもいつもと変わらない。

レースは直前にアクシデントが発生する。
逃げてレースを作ると思われたはずのレジェンドテイオーがスタート地点での輪乗り中にシリウスシンボリに蹴られ競走除外となってしまう。

同時にダイナアクトレスも脇腹を蹴られたが、こちらは無事で女傑ぶりを見せつける。
気性難がトレードマークのモガミ産駒らしさを見せつけるシリウスシンボリの荒ぶりだったが、今日の荒ぶりは何時も以上だった。

そのシリウスシンボリが視線に捉えていたのは・・・
オグリキャップだった。
まるで敵が誰か分かっているように威嚇しようとした所に、たまたまレジェンドテイオーとダイナアクトレスが側にいた為にとばっちりを喰らった訳だ。

だが、当のオグリキャップは我関せず・・・
シリウスシンボリ等、眼中には無かったのだ。

そんな不穏なレース。
スタートと共に先頭に立ったのはマイネルダビデ。
自分から行ったと言うより、仕方なく先頭と言う走り。
故にこの距離とは思えないスローペースでレースが始まったのだ。

オグリキャップは最後方にちかい9番手。
その前には荒ぶるシリウスシンボリ。
後ろにはフレッシュボイスが追走する。

最初の1000m通過、1分1秒5。
これは遅い。
いくら抜群の切れ味というものをもってしても届くかどうかは自信が揺らぐ。

マイネルダビデが淡々と逃げ、2番手のトウショウサミットも等間隔で追っている。
3番手がダイナアクトレスとボールドノースマン。
そこに、この流れを嫌ったのか、単にかかっただけなのか、ウインドストースが外目からスーッと上がってきた。

それにオグリキャップは追従しない。
このスローペースで普通なら少しでも前に行かないと勝機は薄くなるものだが、澪はじっと我慢する。
その澪の脳裏にあるのは、タマモクロスの強烈なまでの豪脚。
あの脚ならこのスローペースでも充分差し切れるだろう。

なら、オグリキャップはどうか。
それを試す為に澪は動かなかったのだ。
もし、この状況で勝てなければ、そもそもタマモクロスと勝負にならない。
だからこそ、この展開で勝てる力があるのかを見極めたいのだ。
オグリキャップの前を走るシリウスシンボリを見てレースはしていない。
後ろにタマモクロスが控えていると仮定してレースをしていたのだ。

故に澪は直線まで動く事は無かった。
そしてオグリキャップも澪の意思を汲んだように、静かに折り合いながらその時を待っていたのだ。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す