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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 253

大型馬らしくストライドも大きいかと思いきや、柔軟性があるのかさほどでは無い。
シロノライデンのようにスタートに気を使ったり馬群になるべく入れないようにとか、そこまで気を使わなくて良いタイプだろう。
気性も素直、その上思ったより器用なので乗り易さはあるかもしれない。

8頭立てで行われた新馬戦。
ゲートも嫌がらずに入り、スタートも普通。
5番手の内側で先行集団に追従する。
奥原からも中団で競馬をしてほしいとの要望通りの位置に付けれた。

2000mと言う中距離戦と言えど、2歳としては長距離戦となる。
その為、先行馬はペースを落とす傾向にある。
ただ、言ってもキャリアの浅い馬ばかり。
すんなりと折り合いのつかない事の方が多い。

今回も逃げ宣言した馬によって序盤こそスローペースで始まったものの、一頭がかかり気味に馬体を合わせた事でペースアップ。
ややハイペースなレースとなる。
中団に付けたガステリアは、折り合いをしっかり付けて追走していた。

急かさずに折り合い重視で進めて、レース後半で差を詰める。
ここは勉強させるつもりでも臨んでいたが、どうやらその必要もないのかもしれない。

4コーナーの手前で先行した2頭が後退。
それを避けるために外寄りに進路を求めていく。
澪がここから、と思った瞬間にガステリアが加速する。
馬が仕掛けどころを知っているかのように。

これは賢い馬だ。
デビュー前の調教が良かったのもあるだろうが、そもそも賢いのだろう。
賢さは勝てる馬の1つの要素でもあった。

レースを知ってるなら良い。
ならば競走馬としてのポテンシャルが見たい。
最終コーナーで馬任せに3番手まで位置を上げた澪は、直線に入り馬にゴーサインを出した。

その瞬間、馬がドンと加速する。
ラモーヌのスッと伸びる加速でもなく、オグリキャップのグイッと伸びる感じでも無い。
一番近い表現は爆発・・・
尻を蹴飛ばされたような感触で加速するガステリアは、大柄で筋肉質な体格そのもののパワーで加速する末脚だった。

一気に3頭を抜き去りぶっちぎる。
福島の短い直線など関係無い。
1馬身2馬身と差は開き、ゴールした時には7馬身。
圧倒的な加速だった。

圧倒的な勝利後、記者からはオグリキャップとの差を聞かれた澪。
新幹線と暴走機関車と答える澪に奥原も成る程と笑う。
ネーミングは兎も角、黒鹿毛の馬体と大きめの流星が蒸気機関車にも見えない事は無いから、紙面等ではそう書かれるようになったのだ。


澪はガステリアの新馬戦を福島で乗り、次の日にはプチソレイユに乗る為に函館へ。
函館記念にプチソレイユと出走した澪だったが、残念ながら2着。
1着は復活の西の2歳チャンピオン、サッカーボーイだった。

ウィンドサッシュの弟で素質馬として名高かったが、春シーズンは怪我で不振。
ここに来てようやくその才能を開花させた訳だ。
一方で負けたプチソレイユは体調が良いのもあって、次走は札幌記念に向かう事になった。


更に7月の末には、オグリキャップが中京記念に出走。
体調回復で秋まで休む予定であったが、秋からは古馬との対戦とあって中京記念で試す意味と、笠松に近い中京競馬場で東海地区のファンに凱旋させる意味もあった。

中央で古馬との対戦は初めてであったが、レースは危なげなく圧勝。
笠松の関係者や東海地区のファンにとっても喜ばしい結果となった。
これで次走は毎日王冠。
本格的に古馬の一流どころと対戦していく事になるのだ。


そんな7月。
アイルランドの卒業シーズンを終えた奈帆と由紀が涼風ファームに帰ってきた。

「まさか人数が増えて帰ってくるとはねぇ」

喜んでいいのか呆れていいのか分からぬ顔で裕美がそう言う。

「戦力が増えたから喜ぶべき事だ」

ラルフの方は笑っている。
猫の手も借りたい涼風ファームにとって、これは大きな戦力だ。

それは裕美の娘、由紀がではない。
由紀もそのうち大きな戦力になるだろう。
だがそれは今では無い。
戦力になるのは赤ん坊を抱く由紀の横にいる男・・・
彼はラルフ達の従兄弟であるニックだ。

「久しぶりだなニック」
「日本は良い所だなラルフ・・・それにオンナもいい」

彼の一族だけあってイケメンかつ女好きなのは同じ。
ラルフの弟であるジョンと同い年かつ同年代だから2人は元々仲が良かった。

「はぁ・・・この歳でおばあちゃんになるとは思わなかったわ」

少し落ち込んだように言う裕美。
まさか留学して旦那と子供を得てくるとは想像してなかった。
しかも彼女も孫と同じ歳の女の子を今年産んでいる。

「繁殖牝馬じゃよくある事だろ?」
「・・・まあそうよねとは言いたくないげどね」

落ち込む裕美にラルフが慰めにならない慰めの言葉。

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