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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 252

このレース後、ニッポーテイオーの引退が発表されたのだった。


3着に食い込んだリトルウイング。
全く追いつけるイメージが無かった。
これがオグリキャップならどうだったか・・・
そのイメージは少しできた。
澪にとってそれが唯一の収穫かもしれない。
だが、逆にリトルウイングで勝てるイメージは全く湧かなかったのだ。


宝塚記念が終わり夏競馬が始まる。
それは同時に新馬のデビューの時期でもある。

ノースウィンドこそアメリカに向かわせたものの、涼風ファームには今年も期待できる新馬がいる。
オークス馬プラニフォリアの弟だ。

父はグリーングラス。
トウショウボーイ、テンポイントと共に激戦を繰り広げた名馬だ。
晩成ステイヤーのイメージがあるが、その体格は細身胴長のステイヤー体格ではなく、ガッチリとした大型馬。
スタミナだけでなくスピードも兼ね備えたパワーホースである。
エリックがグリーングラスの馬体を見て、セントオーキッドと配合すれば良い所が出ると見込んでいたが、成長していく事にそれが正解だったと確信したのだ。

プラニフォリアも成長、仕上がりが早く気性もそこまで荒くなく扱いやすい。
エリックの予想よりも早くにデビューへと送り出すことができたのだ。

入厩先は姉と同じ奥原厩舎。
ガステリアと名付けられた牡馬は7月の福島競馬場の芝2000mの新馬戦でデビューすることになる。

「きょうだい共々手がかからなくていい子だね。大好きだよ」
パドックは愛美がひとりで引いて歩く。

それを外から見ているのはラルフ。

「やっぱり無事にデビューできた感慨は大きいな」

今でこそ大人しいが、生まれた頃から大柄でやんちゃ。
母馬のセントオーキッドを困らせ、子馬の中では断然のガキ大将。
馴致に入っても随分手こずらせた馬だ。

それをジョンとラルフで粘り強く馴致してきた訳で、そのお陰もあって今は大人しいのである。
ただ筋肉質で雄大な黒鹿毛の馬体は父親のグリーングラスに良く似ており、馴致、調教と進むごとに才能を感じさせていた。
そんな手こずらされた思いがあったから、デビュー戦をわざわざラルフが見に来た訳だ。

それだけでなく、今年はノースウィンドをアメリカに向かわせた為に、このガステリア一頭しか樹里の所有馬がいない。
セリなども見てはみたものの、今年気になる馬がいなかったのもある。

そして今回の鞍上は澪。
誰に任せるか迷った奥原だったが、ラモーヌでコンビを組んだ彼女に任せる事にしたのだ。

同じ福島芝2000mで行われるメインの重賞・七夕賞にも奥原厩舎からはトウショウサミットが出走するが、そちらも合わせての騎乗依頼だ。

パドックでは静止命令がかかり、出走各馬に騎手が集まる。

「大きい仔ですね」
「今年のオークス馬の弟くんだよ」
「ああ、そうなんですね…」

プラニフォリアも牡馬のような体格をした牝馬だったが、こちらは重厚感が凄い。
澪はシロノライデンで大型馬にも乗っていたが、大型だがステイヤーらしいスラッとした体型だった。
ガステリアは筋骨隆々としたタイプで、特に尻のボリュームは凄い。
跨った感じは重そうで速い印象は受けなかった。

ズブい子なのだろうかとやや心配した澪だが、跨ると少し気合いが入った感があって安心する。
これからレースが始まると言うのは理解できているようで、見た目の印象よりも賢いような気はした。
何より奥原や愛美からラモーヌと変わらぬぐらいの期待度が見て取れるから、印象はさほど良く無くても素質馬なのは確かだろう。

全体的にソワソワした新馬達の中で、落ち着いた方のガステリア。
パドックから本馬場に入り、返し馬をするとゴツゴツとした印象とは違い柔らかな走りに少し驚く。
これなら小回りな福島コースでもコーナーリングに困る事は無いだろう。
だがやはり、重厚でスピード感は余り無い。

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