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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 251

その後の3番人気がリトルウイング。
距離の万能性は認められているものの、ニッポーテイオー程の先行力やスピードは無く、タマモクロス程の末脚やスタミナは無いと言う所がネックになっての評価だった。

だが、春のG1勝者3頭が揃うと言うのは豪華であった。
特にニッポーテイオーの郷家とタマモクロスの南は自分の馬の勝利を信じきっているように堂々としていた。

逆にリトルウイングの澪にとっては悩み所だった。
上位2頭に比べて決め手に欠けるのは理解はしている。
能力はそこまで負けていないとは思っているものの、その決め手の部分が悩みなのだ。

仁藤からは『好きに乗ればええやろ』と言われてはいるが、それがまた難しい。
悩みが解決せぬままに開催日を迎えてしまった感があった。

だが、悩もうが何しようがレースは始まる。
スタートと同時に快速牝馬メジロフルマーが猛ダッシュ。
ニッポーテイオーはあえて競りかけず2番手。
リトルウイングは中団の8番手辺り、その内側にはタマモクロスが位置していた。

スタート直後のラップが若干速くなったが、最初の1000m通過はジャスト1分。
前も残れるし後ろも十分届く。
ニッポーテイオーは自分でレースが作れなくてもしっかり勝つ競馬はできる馬だ。郷家は自信を持って臨んでいた。
あとはどのタイミングで逃げるメジロフルマーを捕まえに行くかだ。

一方の澪はまだ迷いが残っていた。
いつ仕掛けるか、内に行くか外に振るか。
それを考えているうちにタマモクロスの方が先に動き出す。

タマモクロスの動きはまだゆっくりと言えど、動いた以上こちらも動かざるを得ない。
これがオグリキャップならば、澪はまだ動かなかっただろう。
だが、リトルウイングの脚ではタマモクロスを後ろから差し切れるイメージは無かった。

一方、ニッポーテイオーの郷家は確かな自信があった。
このペース、そして位置取り。
馬の調子も良くスタミナも温存できている。
阪神の直線と坂を考慮しても、タマモクロスに差される事は無い。
そう確信できるぐらいレース運びは完璧だった。

一方のタマモクロスは周囲の想定より早く前に進出。
ニッポーテイオーとの差を詰める。
届かないからでは無い・・・
南は鞍上で手ごたえを感じていた。

普段ナーバスで落ち着きの無い馬が、落ち着き払って走っていた。
そして、溢れんばかりのパワーを溜めに溜めていた。
それならばと南は後方待機の戦術を変えた。
ロングスパートで全てぶっちぎってやろう・・・
タマモクロスが現役最強であると見せつける為に、南は早めの仕掛けを敢行したのだった。

4コーナー手前。
逃げるメジロフルマーに並んでいくニッポーテイオー。
3番手はミスターボーイが脱落しプレジデントシチーが上がっていくが手綱はいっぱいに動いている。
その直後までタマモクロスは追い上げてきていた。

直線、ニッポーテイオーが満を持して先頭に立つ。
しかしそれを待ってましたとばかりに馬体を併せていくタマモクロス。
2頭のマッチレースが繰り広げられ、3番手以降と差が開く。
リトルウイングはようやくそこまで上がってくるが届きそうにない。

郷家は後ろからタマモクロスが迫っているのは分かっていた。
だが、先に追い出したニッポーテイオーの脚はいくらタマモクロスであれ差しきれないと思っていた。
正直、完璧な騎乗だったのだ。

だが、馬体を合わせてからが勝負と思っていた郷家だったが・・・
馬体が合わさる事は無かった。
剛腕が必死で追うニッポーテイオーをタマモクロスが並ぶ間も無く抜かして行ったのだ。

それはまさに白い稲妻・・・
マイルの帝王が抵抗すらできなかったのだ。

そのままニッポーテイオーを突き放してゴール。
南の思い通り、ぶっちぎって強さを見せたレースとなったのだ。


郷家はニッポーテイオーの鞍上で天を見上げる。
完全な力負け。
ニッポーテイオーに乗って初めて完全な力負けを喫したのだ。
今まで敗戦はあった。
それらは展開次第で勝てたり、ニッポーテイオーの調子が落ちていたりと理由はあった。
だが、今回は何度やっても勝てない・・・
本当に力負けだったのだ。

「潮時なんだろうな・・・」

ここまでの力負けなら悔いは無い。
ならば、帝王の矜持を守ってやらねばならない。

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