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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 241

そんな中、先頭に立ったプチソレイユが後続を突き放していく。
ランドヒリュウが追い縋るが、熊崎の鞭に応えて差を広げる。
だが、大外から猛然とゴールドシチーとフレッシュボイスが駆け上がってくる。
2頭共後方集団から凄まじい脚でごぼう抜き。
見る間にプチソレイユに迫ってきたのだ。

特にフレッシュボイスの脚が凄まじかった。
悠が最後の最後まで溜めた脚を直線に入り解放し、仁川の坂をものともせず次々とぶち抜いていく。
先頭まであと僅か。
プチソレイユの脚に衰えは無いものの、フレッシュボイスの勢いがそれを凌駕していた。

残り100m。
そして、プチソレイユまであと僅か。
ゴール直前で内から交わす。

そう、内から交わしたのだ。
リトルウイングが。
コンディションの良い内側で身を潜めていたリトルウイングと澪。
余力充分に追走し、差し切った訳だ。

1着リトルウイング、2着プチソレイユ。
仁藤厩舎と樹里所有馬のワンツーとなった。
リトルウイングにとっては昨年のクラシックであと一歩のところで逃し続けてきたタイトルをようやく掴めたのだから、仁藤も感慨深いものがあった。

プチソレイユ鞍上の熊崎は初GT制覇をあと僅かなところで逃し悔しさ半分と言う感じで引き上げてきた。

「いい競馬だった。勝ったのもウチの馬だから仕方ないね」
松山がそう言って馬と鞍上を労う。

一方、勝利した澪は流石に涙が込み上げてきていた。
クラシックは全て惜敗。
それでも誰も澪を責めなかった。
澪を責めなかったと言うより、関係者全てが歯痒い思いをしていたからこそ、澪だけの責任にならなかったのだ。

だから余計に澪はこのレースはと言う意気込みがあったし、仁藤や松山も意気込んで万全の仕上げをしたのである。
その結果、プチソレイユを破る事にはなってしまったが、どうにか結果を出せた事に安堵していたのだ。

「これで無冠の帝王を返上やな」

安堵の表情で言う仁藤。
だが、これで終わりではない。

「天皇賞も宝塚も獲りに行かんとな」
「ええ、勿論そのつもりです!」

澪としても、これで満足ではない。
リトルウイングはもっと勝っていけると信じているのだ。

こうして春のG1、2戦目も樹里の所有馬が戴冠。
次の桜花賞もと期待が膨らむばかりだった。


その桜花賞の前日。
ニュージーランドトロフィーにオグリキャップが出走していたのである。

びっくりするような過密ローテだが、これには止むに止まれぬ事情があったのである。

丁度、1週間前・・・
瀬戸内厩舎の厩務員が頭を抱えていた。
理由は、オグリキャップである。

毎日杯のレース後も旺盛な食欲を見せたオグリキャップ。
数日もすると、レース前より体重が増える程の食欲・・・
その規格外の胃袋に厩務員が頭を抱えていたのである。

瀬戸内厩舎に入厩した時から凄まじい食欲で、ハードな調教でも体重が増える始末。
故に急遽ファルコンステークスに出走させたものの、レース後も旺盛な食欲ですぐに体重が増し・・・
その為に過密ローテで毎日杯に出したものの、それでもケロッとしていて食欲は旺盛。

体重管理に悩んだ結果、遠征してレースに使えば落ち着くだろうとニュージーランドカップに登録したのだった。

NHKマイルカップの前哨戦とは言え、殆どの有力馬は皐月賞に出ている。
その皐月賞でも本命サイドのヤエノムテキを撃破したオグリキャップは、ここでは断然の一番人気。
騎乗する澪もオグリキャップの元気な様子にびっくりするしかなかった。


そしてレースは、期待通りの圧勝劇。
レース前に瀬戸内から澪は『できる限り派手に勝って欲しい』と注文を受けていたが、その通りのぶっち切りで勝ってのけた。
これはクラシック候補の同世代への宣戦布告・・・
ではなく、クラシックから締め出した中央競馬に対する宣戦布告になったのだ。


オグリキャップの圧勝を受けた翌日。
クラシックの意義が問われる中で桜花賞が始まる。

こちらは牝馬ながらクラシックの晴れ舞台であるが、馬主席の話題はオグリキャップであった。

「あの素質でクラシックに出れないとは・・・」
「いやはや、制度とは言えねぇ・・・」
「全くですな・・・フェアではない」

自分の馬がクラシックで勝って欲しいと言う思いがあれど、真の実力馬が栄冠を得るべきと言う思いも馬主達には強い。
オグリキャップの問題は、そんな馬主達にとって問題提起となっていたのだ。
そして、その問題提起が世間を巻き込みつつあるのも皆感じていた。

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