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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 239

返し馬の反応も抜群で、的家は惚れ惚れしながらも
「この感じは次の本番で欲しかったね」
と思わせるほど。

「まあ続けて使っても出来落ちの少ない子だから問題はないね」

レースは前半1000mを59秒半ばのペース。
プラニフォリアは好位5、6番手を追走していた。

もう少し遅いペースが良かったが、距離を考えると妥当とも言える。

コーナーに差し掛かり例年の中山コースなら動き始める頃だが、東京コースは直線に入ってからが勝負だ。
毎日王冠がそうだが、府中のこの距離は展開とか関係なく地力の勝負となる。

その直線に入り的家は外に持ち出す。
その分ロスになるが、馬の地力を信じているからこその戦術だ。
むしろ狭くてごちゃついた所で勝負させたくは無い。

直線入り口から鞭を使わず、じっくりと追って競り落としていく。
瞬発力も非凡ではあるが、先を見据えてあえて先行抜け出しの横綱相撲に持ち込む。

的家が鞭を震ったのは、いよいよ先頭の馬達と並んだ頃。
グイグイと脚を伸ばし、力強く抜いていく。
そして、猛追する後続を完封してゴール。
強い内容で勝利したのだ。

勝利インタビューで的家は次も頑張りますと言葉少なだったが、嬉しさを隠しきれない表情であった。
奥原の方は、今はレース終わったばかりだからねと明言はしなかったものの、その心はもう決まっていたようだった。


そして、やってきた春のG1シーズン。
高松宮記念にはウィンドサッシュが出走する。

そのウィンドサッシュと人気を二分するのはダイナアクトレス。
やや適距離より短いものの、実績能力共に現役トップクラスの牝馬だ。

奇しくもウィンドサッシュとは共に社来の生産馬。
どちらも吉野がこれぞと見込んだ血統であった。

「サクラスターオーは悪くないようですね」
「ええ・・・一時期と比べると良いですが、まだ楽観はできないと」

吉野と樹里は馬主席でそんな話をする。
シャダイソフィアの件もあるだけに、吉野もそれをかなり気にかけているようだった。

「ただ・・・今年はシャダイソフィアを繁殖として試してみたいとの話ですよ」
「そうですか!・・・いや、是非そうして欲しい!」

そのシャダイソフィアの方は完全に元気を取り戻していた。
エリックも発情さえすれば今年はチャレンジしてみようと話している。

「シャダイソフィアの相手なんですが、ウチのスターライトブルーを第一候補にと考えています」
「おお、素晴らしいですね。あの馬も本当に強い馬だった…」

まずは試す段階…それでも吉野の安堵と嬉しい反応を知れて樹里もホッとする。


高松宮記念はダイナアクトレスの他にもセントシーザーやホクトヘリオスなど実力馬揃いで簡単にはいかないレースになるだろう、と樹里も吉野も踏んでいた。

レースはユキノローズが逃げ、ウィンドサッシュは中団、ダイナアクトレスは後方グループという展開となる。

前走よりやや控えた競馬をしているのは、前回の敗戦を生かしてないのではなく状態が万全だからだ。
やや適距離より長いウィンドサッシュに、短距離の速い流れを体感させるのが前走の目的の一つであり、その意味では良い調整となった。
横平も鞍上で前回以上の手応えを感じていた。

逆にダイナアクトレスは更に適距離から外れる上に、鞍上は主戦の岡江ではなく的家。
的家も名手であるが、テン乗りで完璧な騎乗を求めるのは酷であろう。
それでも勝負師故に狙ってきているのは確かだ。

そうであっても奥原は横平に『自分のレースをしなさい』と言っていた。
敵は他馬ではない。
横平もそれは理解していた。

勝負所の4コーナーでウィンドサッシュは中団から上手くインをさばいて先頭集団に取りついていた。
外に出さずインをつけたのは横平の成長であり、勘の鋭さだ。
小回りの中京で逃げるユキノローズが膨らむのを想定してたようにインに突っ込んだのは素晴らしい直感としか言いようが無い。

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