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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 238

出産自体は頗る安産だったが、落ち着きを取り戻した後の幸子の第一声が

「あの子は無事なの…?」

ここでいう「あの子」とは、自らが産んだ子ではなくサクラスターオーのことだったので、エリックもさすがに笑ってしまったという。

「まだまだ予断は許さない状況だが、最悪の事態は脱せただろう」

人の出産ラッシュが終わりを告げると、涼風ファームの繁殖牝馬たちの出産時期となる。
こちらは皆順調だった。

牝馬達が無事に出産した事で、牧場も何とか平穏を取り戻した気がする。
サクラスターオーも悪いながらも体調が安定してきた事で、後は脚の治りを待ちつつ体調回復に向けて動き出せるようになってきたのだ。


そしてクラシックのステップレースも大詰め。
フラワーカップにプラニフォリアが出走する。

前回は牡馬クラシック有力馬のサクラチヨノオーと競り合って2着。
負けて強しと言った雰囲気からか、ここでは断然一番人気に推されていた。

そのフラワーカップ観戦に訪れた樹里だったが、馬主達や関係者の話題はオグリキャップで持ちきり・・・

「えっ?!・・・毎日杯に登録ですか?!」
「そうみたいですな・・・どうやらクラシック候補生達にぶつけてみると言う事のようで」

馬主仲間からそう聞いて樹里は驚く。
間を置かず出走と言うローテーションは地方馬ではよくあるが、中央の有力馬は余りやらない。
どうやらオグリキャップ陣営はクラシックに出れないから、クラシック候補生相手にデモンストレーションをやると言う事のようだ。

ここで圧勝でもすれば、世論がダービー出走を求める事を期待してと言うのもあるかもしれない。

「ヤエノムテキ相手にどれだけやれるかですな」
「そうですね・・・」

ヤエノムテキは今年のクラシック候補生の中でも最有翼の一頭。
2歳の東西チャンピオン、サクラチヨノオーとサッカーボーイ、そしてヤエノムテキはこの世代でもトップクラスの評価。
樹里のスーパークリークにとっても、目下のライバルと言える存在だ。

その一角のヤエノムテキが毎日杯に出走する。
管理する瀬戸内調教師から『仮想皐月賞です』との発言があったようで、その事で馬主達も盛り上がっているようだった。

「マイナー血統ですし、距離が長いのではと思いますね」
「そうですね、前回がフロックだった可能性もなきにしもあらずですな」

衝撃的なレースをしたオグリキャップだが、世間の騒ぎも馬主達の評価もまだまだ高いとは言えなかった。
とりあえずはお手並拝見と言う雰囲気だった。


そんな話題で盛り上がる中、フラワーカップが始まる。
プラニフォリアの鞍上は引き続き的家である。

勝負師とも呼ばれる彼はレースに敗れてもプラニフォリアのことを高評価し続け、奥原にも「彼女は手放したくない」と言うほど気に入っている。

そんな的家はパドックにて奥原と
「先生、あくまで今日のレースの感触次第なんですけど」
「うん」
「桜花賞はパスして、オークス一本で行くべきかなと」
「そうだね、僕もそれは薄々思っていたんだ」

奥原や的家の共通認識として、プラニフォリアはクラシックディスタンスで最も力を発揮するタイプだ。
プラニフォリアの父リアルシャダイの初年度産駒である為、産駒の傾向はまだ未知なものの、長距離かつ広い競馬場が合う傾向だろうとの評価だ。
特にプラニフォリアは父のリアルシャダイと良く似ており、その傾向によくはまったタイプと言えた。

そんな傾向だからこそややトリッキーで短い距離の桜花賞は向かないとの判断だった。
幸いと言うか、今年のフラワーカップは中山ではなく東京開催の為にプラニフォリアは最適であった。

人気はプラニフォリアが断然で、それに続くのはジムクインとアインリーゼン。
的家が若干警戒するのが人気薄のフリートークだが、他所のトライアルに比べればメンバーは薄いと言える。

逆にプラニフォリアがフラワーカップから始動と聞いて回避した陣営もいると言う話だった。
その噂が本当であると言えるぐらい、プラニフォリアの今日の出来は良かった。

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