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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 236

明けて3歳、3か月間隔はあいたが仕上がりに問題はない。

「とてもいい子ですよ」

調教で跨る悠はいつもそれしか言わないが、満面の笑みからくるこの言葉に嘘はない。

2歳女王だけあって断然の1番人気。
新馬戦が圧巻のパフォーマンスだったバンブトンリッチが続き、新馬、特別と連勝のシヨノロマンが3番人気。このシヨノロマンには澪が跨る。

こちらは桜花賞の出走権を狙っているので、3着以内が絶対条件。
陣営もそれを期待しての澪の起用なのだ。

レースはニホンピロピュアーが逃げる展開。
バンブトンリッチとシヨノロマンは中団から後方。
オータムリーヴスは3番手と前での競馬となった。

逃げるニホンピロピュアーを見ながらオータムリーヴスを追走させる悠。
馬はリラックスして楽に追走している。
脚質にある程度の自在性があると思っているから位置取りにそこまで神経を使わないで良い馬だが、できるだけ負担は減らしてやりたいとは考えている。
あくまでオータムリーヴスにとって、ここは調整なのだ。

淡々としたペースなのも悠には都合がいい。
このペースなら後ろも早めに動くだろうと考えてはいた。
故に3コーナーで逃げ馬のすぐ後ろまで進めると、直線入り口では並びかける。
そのまま押し切るべく、直線に入ると悠が鞭を振るう。

逃げるニホンピロピュアー、2番手のネーハイコインドをあっさりとらえオータムリーヴスが先頭に立つ。
もう一度ステッキを入れるとビュン、と反応して先行する2頭をあっという間に交わし去った。
悠は手綱を二度三度動かしてさらに促す。
ぐんぐん伸びてリードが広がる。

このまま突き放して完勝、と思われたが、オータムリーヴス以上に伸び脚を見せた馬が1頭いた。
シヨノロマンだ。

猛追するシヨノロマン。
オータムリーヴスが先行抜け出しする事を予測してここまで脚を溜めていたのだ。

それでも粘るオータムリーヴス。
追い上げるシヨノロマン。
2頭がゴールを過ぎる。
僅かに先着したのはオータムリーヴスだったのだ。

2歳チャンピオンとしての実力をきっちり示し、桜花賞に向けて万全の状況を見せれたのだ。


三月半ばを過ぎ、すみれステークスでスーパークリークが2勝目。
ただ疲労が溜まっているのもあって、皐月賞を回避してダービーへ直接向かう事になった。

その週のファルコンステークス。
3歳限定戦の中ではクラシック候補と言うよりは短距離路線の馬が揃うこのレース。
ここに異色の馬が出走していた。

その馬の名はオグリキャップ。
笠松で12戦10勝。
鳴り物入りで中央に殴り込んできた。
本来はこんな所で走る馬では無い。

馬主席で渋い顔の祐志。
佐原の資金力でこの馬を買った祐志だったが、たった一つミスを犯してしまっていた。

「クラシック登録されてないの?!」

樹里が目を丸くする。

渋い顔でそうだと言う祐志。
これは彼が悪い訳では無い。

中央にはクラシック登録と言う制度があり、登録した馬のみがクラシックに出走できる。
地方でも大井などの馬主であれば登録に前向きな馬主も少なくないが、地方のマイナーな競馬場の馬主だと登録料も馬鹿にならないからしない事の方が多い。
逆に中央でやっていると、登録して当然である為、確認する事すら無い訳だ。

「盲点だったが仕方は無い・・・」

今年のダービーを取り損ねたと祐志は渋い顔で言う。
その祐志からこの馬の凄さを聞いていた樹里だが、パッと見てクリークより能力があるとは思えなかった。
黒ずんだ芦毛のボテッとした馬体は余り雰囲気が良く無い。
エリック達はクリークに匹敵する怪物と言っていたが、樹里の第一印象はさして良く無かったのだ。


そのオグリキャップには澪が騎乗する。
管理する瀬戸内調教師から声をかけられて調教から乗ったが、久々に調教でイッてしまったのだ。
それぐらい衝撃的な脚だった。

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