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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 235

奥原は横平に『じっくりと乗れ』と指示している。
これは後ろから行けと言う訳じゃない。

ある程度短い距離の場合は先手を取った方が有利である。
だが、勝負所で使う脚が無ければ勝てないのも事実だ。
だから、奥原は先行しながらも無理な追走を避け、勝負所までじっくりと行けと言う指示な訳だ。
横平も理解し、そう言う戦術を組み立てている。

本能的な騎乗が持ち味の横平だが、騎乗技術が上がるにつれて色々な引き出しが増えつつある。
澪や悠に比べれば荒削り過ぎるのだが、逆に彼らの完成度が高すぎるとも言える。
それに荒削り感が横平の魅力でもある。

とは言え、荒削りのまま乗ってしまうと、気性の激し目な牝馬は余計にヒートアップしやすい。
故に奥原はじっくり乗れと言った訳だが、レース開始から横平は奥原が思っている以上に上手く乗っていたのだ。

先行グループがやや競り合い気味の展開だが、決してハイペースではない。
開幕週の阪神の芝コースで、パンパンの良馬場。
前残りの可能性が高い中で、先行脚質でないウィンドサッシュがどうやって勝てるかを横平はしっかり考えていた。

ミスターボーイが先頭。
セントシーザーが2番手。
ウィンドサッシュはじわじわとポジションを上げながらこの実力派2頭に迫っていた。

コーナーから直線に入る。
有力2頭が仕掛け始めたのを見て、少しタイミングを遅らせて横平が仕掛ける。

先手を取った方が良い短距離戦である事を考えるなら、2頭より先に仕掛けた方が良い。
だが、奥原の指示もあり、横平はその指示と自分の勘を頼りにタイミングをずらしたのだ。

先頭はミスターボーイとセントシーザーの争い。
阪神の坂をものともせず2頭の脚は衰えない。
そこから2馬身離れてウィンドサッシュ。
横平の鞭に応えて2頭に迫る勢いだった。

その後ろから猛然と追い込んできたのはマックスビューティ。
やや距離が短いとも言えるこのレースだったが、天才田沢が上手く馬群をさばいて伸びてきたのだ。

だが、ミスターボーイとセントシーザーの脚は衰えない。
ややミスターボーイが先行するものの、セントシーザーも食らいつく。
そこにウィンドサッシュが迫る。
その差は1馬身を切った。

さらにその1馬身半ほど後ろまでマックスビューティが迫ってきた。
ゴール前で4頭並ぶのではとの期待も膨らみスタンドが一瞬どよめく。

しかしそこまでは行かなかった。
ウィンドサッシュはセントシーザーを交わすことはできたがミスターボーイには僅かに届かず2着。
マックスビューティは最後脚を余した感じで4着。

横平はやってしまったと言う顔をしていたが、レースの一部始終を見守っていた奥原は大きく頷いていた。
これでいい・・・
仕掛けを早くしてれば届いていたかどうかは結果論である。
休み明けのウィンドサッシュの動きが本来より重く感じたから、この結果は残念だが仕方は無い。
本番が次である以上、本番に向けた乗り方をしてくれれば良い訳だ。

残念であったものの、本番に向けた調整ができたウィンドサッシュ。
そして3月に入ってもステップレースが続く。
チューリップ賞にオータムリーヴスが出走する。


涼風ファームの基礎繁殖血統に連なる母のアキネバーは、この系統の特徴通りに重い傾向がある。
それが天馬トウショウボーイとの掛け合わせで、彼の持つスピードと軽快さを手に入れている。
これで母系のスタミナが出てくれればオークスまで期待できそうとは寛子の談である。

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