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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 225

その代わりにエリザベス女王杯を勝ったプチソレイユが出走する。

今回の本命は復帰して菊花賞勝ちのサクラスターオー。
そこにジャパンカップで大健闘したダイナアクトレス、ダービー馬メリーナイスが人気で続く。
それ以外にも二冠牝馬マックスビューティ、前年のダービー馬ダイナガリバー、秋華賞馬タレンティドガール、オークス馬トウカイローマン、菊花賞馬メジロデュレン、G1常連のレジェンドテイオー、スダホーク、クシロキングなども参戦と豪華なメンバーが集まった。


本命のサクラスターオーは本命だと分かるぐらいの出来であった。
菊花賞の時のギリギリの感じではなく、一切の無駄を削ぎ落としたような馬体で張りやツヤも抜群。
パドックでの周回を見た誰もが一頭抜けていると思う程の馬体だった。

だが、同時に近寄り難い雰囲気も醸し出していた。
澪がプチソレイユの前を歩くサクラスターオーを見た印象は背筋が冷たくなるような怖さだった。
それは抜き身の刀を前にした感覚だった。
そんな経験はした事が無かったが、そう感じる程怖かった。

リトルウイングに騎乗して対戦した時とは明らかに違った雰囲気を感じた。

「さすがにクラシックホースは佇まいも違うよね」
「え、ええ…」

パドックで静止命令がかかる。
プチソレイユを引いていた松山がサクラスターオーの馬体を見てうんうんと頷いていた。

「人気も全然ないし気楽にいけばいいさ」
「この前みたいになったらいいなと思ってます」

返し馬の感触も凄く良い。
ただここはさすがに相手が強いなとも思っていた。

そんな澪だけでなく、パドックの様子から本馬場入場までを馬主席で見ていた樹里とエリックも異様な雰囲気に気づいていた。

「サクラスターオーの仕上げ・・・凄いように見えますね」

そんな樹里の言葉にエリックは厳しい顔だった。
今回は身重の幸子を連れて来ていないが、それは正解だったかもしれないと思っていた。

「サラブレッドはレースに勝つ事が使命だし、この仕上げの素晴らしさも分かる・・・」

そう言うが、その厳しい顔は悩みも内包していた。

「出さざるを得ない・・・いや、これを出さないと言う選択は無いだろう・・・」

この仕上げは、張り詰めた糸のようにもエリックには思えた。
ギリギリ過ぎる仕上げ・・・
馬の気合いも恐ろしい程高まっている。
レースに出さないと言う選択はあり得ないが、エリックの心はざわつく。

「体調や脚元が不安かしら?」
「・・・そうであっても、恐らく出ないと言う選択肢は誰も取れないだろう」

獣医である彼なら止めれるかと言えば難しい。
彼は同時に馬産家であるし、サラブレッドの宿命は理解している。

現に、当初サクラスターオーは菊花賞の後は年内休養の予定だったとエリックは聞いていた。
それは樹里や真奈たちも同じだった。
長距離レースは走り切った後のダメージも大きい。
リトルウイングもなかなか調子を戻すことが出来なかったと樹里は仁藤から説明された。

ではサクラスターオーはなぜこのグランプリに出走するに至ったのか。
有馬記念にはファン投票がある。
そのファン投票でサクラスターオーが1位となったのだ。

一位になった事は陣営にとって悩ましい事だった。
菊花賞からの経過を見るに出れない事は無い・・・
調子も上向きでもある。
弱い体質と脚元の不安は陣営も理解はしている。
だが、調整してみると、ひょっとするとと思わせる出来になってきたのだ。

ファン投票一位に相応しい出来で出走できる・・・
そうなれば能力は現役最高峰である。
この仕上がりで出さない選択肢は取れない。

だが、エリックが気にしていたのは、出来が良すぎる・・・
仕上がり過ぎていると言う所だった。
それが澪が感じた怖さに繋がっているのだろう。
それが気にし過ぎであって欲しいと願うエリックであった。


その有馬記念は、意外な展開からスタートした。
逃げ宣言していたレジェンドテイオーであったが、それを交わして先頭に立ったのはプチソレイユだった。
意外な伏兵の仕掛けにスタンドが騒めく。

あえて仕掛けていった澪。
レジェンドテイオーとの競り合いになる事も想定済みで、あえて勝負を仕掛けて行ったのだ。

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