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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 224

シャティンの直線は長い。
だから早めに動くと最後に脚が上がることも考えていた。
だが、今この差は致命的にも思えた。

それでも今年に入ってからシアトリカルの主戦を務めるダイはいたって冷静にこの状況を判断しているように、並走する澪は感じていた。
それならば…

後続が追い付いてきた頃、ようやくシアトリカル鞍上のダイがゴーサインを出す。

それとほぼ同時。
澪もウィンドフォールにゴーサインを出す。

同時に叩き合う2頭。
加速もほぼ同じ。
追いついてきた後続を突き放すように抜け出していく。
感覚的にいけると思っていた澪だが、ウィンドフォールは米芝チャンピオンと同等の脚力で走れている。
その事実に澪も気合が入る。

とは言え、先頭のフライングダンサーまではまだ距離がある。
長い直線とは言え、相当シャロンに上手く乗られていた。
澪と歳の変わらないシャロンであるが、香港のリーディングジョッキーであると言う実力は本物なのだ。

だが、澪も日本のリーディングジョッキーである。
仲良くなったシャロンではあるが、澪にとって初めてできた同性のライバルである。
負けたくない、負けれないと言う気持ちは強いものがあった。

そんな澪の思いを乗せてウィンドフォールがフライングダンサーとの距離を詰めていく。
隣にはシアトリカルが追走。
そして、やはりトニービンやムトトは確実に追い上げてきて、すぐ後ろまで迫ってきていた。

最内から大外まで、まるでハンデキャップ戦かと思うくらいの横並びのたたき合いが始まる。
隣の馬の息遣い、鞭の音もはっきり聞こえる。

フライングダンサーも二の足で踏ん張り、先頭を譲らない。
その外から並びかけるシアトリカル。
さらにウィンドフォール。
外から追い上げるトニービン、ムトト。

この大接戦はゴール手前まで続いた。

最後はウィンドフォールがフライングダンサーを交わした所でゴール。
しかし、その少し前にはシアトリカルがいたのだ。

ラストレースで勝てなかったが、米芝チャンピオンと差の無い競馬ができた。
澪としてもベストの乗り方ができたから悔いは無い。
3着には粘ったフライングダンサー。
シャロンの上手い乗り方で大健闘したのだ。
スタンドから暖かい拍手がそれを物語っていたし、シャロンもやりきった顔をしていた。

奥原も負けたとは言え満足だった。
惜敗が多く取りこぼしの多い馬だったが、比較的安定した成績を残せたのは地力があったからだろう。
この馬に関わった事で奥原自身も調教師として成長できた感があった。

「最後は残念でしたが、こんな馬を任せて頂いて感謝しています」
「いえいえ、先生のお陰でここまで来れたのです」

樹里も奥原を労う。
ラモーヌにせよウィンドフォールにせよ、奥原がよく仕上げてくれたと感謝しかない。

そしてウィンドフォールは新たな仕事・・・種牡馬として日高に戻る。
そのスピード故に期待も大きい。

「ウィンドフォールの仔を任せていただけたら調教師冥利に尽きると思っています」
「ええ、その時はまたお願いします」

翌週、年内最後の大一番、有馬記念。
当初はリトルウイングが出走のプランを立てていたが菊花賞後のコンディションの回復に時間がかかっていたため無理せず来年まで待機することになった。

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