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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 223

ここでウィンドフォールと同じく引退レースとなるブリーダーズカップターフ勝ち馬シアトリカルを筆頭に、凱旋門賞2着のトニービン、それにムトトやアレミロード、リヴリア、ハイエストオナー、ナトルーンなど強豪馬が揃う。

「本当によく集まったものねぇ」
「そうね、ここまで集まったら地元の私達にしてみれば、この日はお祭りよ」

澪にそう言うシャロンの言う通り、これはお祭りだろう。
彼女が乗るフライングダンサーと言う騸馬も香港ではトップクラスらしいのだが、このメンバーが集まると見劣りする。

「とは言え、ここは私達の地元・・・負けてやるつもりなんてないわ」

シャロンの微笑みに澪も微笑みで返す。
相手がどうであれ、お互い負ける気なんて無い。

強豪ひしめき合う中、ウィンドフォールの状態を馬場入りで確かめる澪。
フットワークは軽やかで、「これならいける」と確信する。

スタートも問題なく出た。
あとは出たなりのポジションで運んでいけば良い。

しかしレースは予想外の状況に。
シャロン鞍上のフライングダンサーがぐんぐんペースを上げて大逃げ戦法を打ち出したのだ。

これは澪も驚いてしまった。
だが、シャロンは破れ被れで大逃げに持ち込んだのではない。

シャロンは香港でリーディングを取る若き名手である。
この競馬場の隅から隅まで知り尽くしているホームグランドであり、ここの勝ち方を最も知っている騎手でもある。

しかもフライングダンサーはマイルが花形の香港にあって非主流派であるスタミナ型。
そのスタミナ型が香港のよく整備された軽い芝を走るのだ。
そう簡単に尽きるスタミナではない。

勿論、一本調子でぶっ飛ばせば流石にスタミナは持たないのだが、スタートダッシュから少しずつ速度は落としている。
更に単に速度を落としただけではスタミナ温存がバレてしまいかねない。
故にわざと区間ごとのラップを一定させず、無謀な暴走で制御できていないと見せかけていた。

そんなシャロンのフライングダンサーに対して、ムトトやトニービンは後方待機策を取る。
それ以外の有力馬も軒並み後ろの方だ。
逆にウィンドフォールと同じく前目で競馬をしている馬もいた。
シアトリカルだ。

ドバイでラモーヌと対戦したこともあるが、この馬はここから鋭い脚の使える馬だ。
ここが引退レースのようだが、力はまだ衰えていない。
並走状態でそんな雰囲気を澪は感じ取る。

フライングダンサーは3コーナーから4コーナーにかけてもまだ軽快に逃げている。
しかしその差は徐々に詰まっている。

そして4コーナーの終わり。
逃げるフライングダンサーに追いついた所で直線に入る。
そこでフライングダンサーに鞭が入った。

鞭と共に加速するフライングダンサー。
どこにそんな余力がと言う加速で後続を突き放す。

「マジで?!」

澪からも驚きの声。
完全にフライングダンサーのスタミナを見誤ったのだった。

それは他の騎手も同じ。
やや早めに後方から仕掛けるムトトとトニービン。
だが、フライングダンサーとの距離は遠い。
澪も仕掛けようとして、ふと隣のシアトリカルを見る。
そのシアトリカルは動いていなかった。
何かを待っているかのように・・・
フライングダンサーとの距離が再び離れても仕掛けてはいなかったのだ。

故に澪も迷った。
フライングダンサーとの距離は離れるし、後続は追いついて来ている。
ここで仕掛けるべきか、待つべきか・・・

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