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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 222

おかげで引っかかる馬もいる中で、オータムリーヴスはリラックスしてレースを運べていた。
育成段階からの教育ももちろんだが、この鞍上・舘の類稀なる才能もオータムリーヴスにいい影響を与えていた。

パドックや厩舎では若干エキサイトすることもある彼女も、ことレースで舘が乗ったらたちまちおとなしくなる。
デビュー当初から勝ち星を量産するスーパールーキーの「魔力」ともいえる。

早いペースを中団で我慢しながらコーナーへ。
4コーナー辺りで動き出す馬もいる中、舘は中団をキープしていた。

そして直線に入る。
400m弱の直線には中山に匹敵する急坂がある。
このお陰で、ペースが多少遅くても後ろが届く。
ましてや早いペースなら尚更だった。

多くの馬が外に持ち出し、プリンセススキーやシノクロスが素晴らしい伸びを見せる。
早くも脚が鈍り始めた先頭集団に並びかける勢いだった。

そんな中、内から猛然と伸びる馬。
オータムリーヴスだ。
舘は溜めに溜めた脚をワンタイミングずらしてゴーサイン。
舘の鞭と共にオータムリーヴスは待ってましたとばかりに猛然とダッシュする。
一瞬で数頭と置き去りにする末脚・・・
これこそが天馬トウショウボーイから得たスピードだった。

外の馬がまったく伸びていないわけではない。
馬場はパンパンの良馬場、所謂トラックバイアスもないのだが、それでも他の馬が止まって見えるくらい、オータムリーヴスの脚は際立っていた。

結果、3馬身半差つけての完勝。
寛子も樹里も驚くほどのパフォーマンスだった。
舘にとっては初GT勝利だが、至って涼しい顔だった。

これでクラシックに弾みがついた。
オータムリーヴスは一旦休養に入り、春のトライアルを目指す事になる。


次の週の朝日杯フューチュリティステークスはウィンドサッシュの弟になるサッカーボーイが圧巻の勝利。
こちらも来年のクラシック有望候補が誕生していた。

その週、樹里は香港に居た。
香港カップにウィンドフォールが出走するのだ。

ウィンドフォールも念願と言える天皇賞を勝ち、この香港カップで引退が決まっている。
引退レースは日本でと言う構想も有ったが、有馬記念の距離は長過ぎるのもあってここを選んだ訳である。
何より奥原は勝負に徹して終わらせてやりたいと言うのもある。

鞍上は澪。
大半はこのコンビでレースをしてきたが、今日が最後である。
彼女にとっても時期的に有力お手馬が相次いで引退なので寂しいのもあるが、次の仕事に無事に送り出せる安堵もあった。

そのウィンドフォールは調子はいい。
天皇賞から調子は維持されていた。
本格的な冬の日本よりも少し暖かい香港は澪にとっても走りやすい環境なのも良い。

レースに向かう環境は申し分ないが、その分相手は強くて気を抜く暇はない。

「澪にはいいお手馬がたくさんいるわね」
「あの子も今日で引退なんだよ」

シャロンとそんな会話を交わす。
さすがにトリプティクは出走しないものの、ウィンドフォールにとっては強力なライバルが多数待ち構えていた。

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