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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 23

そんな澪とシロノライデン。
パドックから本馬場へ。
軽く流すと、やはり春に比べると足取りは軽快に感じる。
馬体重は歴代最少の507kg。
それでいて大きくなったように見えると言うのは、それだけ鍛え上げられた証拠だろう。

こんな風に馬が順調な分、澪の気負いも大きかった。
何としても菊花賞に走らせたいと言う思いが益々強くなってしまう。

そして順番にゲートイン。
シロノライデンはゲートを嫌がるタイプではなく入りもスムーズ。
ただ追い込み馬をが内枠を引いてしまったのが、少しレースを難しくしていた。


ゲートが開く。
シロノライデンはやや遅れ気味のスタート。
だが、これは内枠だからこその戦術。
いつもの定位置である最後方に陣取った。

騎乗する澪が感じるシロノライデンはリラックスして走ってるように見える。
ややスローペースなのが気がかりだが、落ち着いて走ってくれているから安心感はある。
レースはそのまま淡々と流れていく。

そして、3コーナーにさしかかるがペースは遅いまま。
シロノライデンにとって楽な展開ではなかった。

このままでは前残りの展開で届かない。
しかし無理に動くと阪神の最後の坂で力尽きる。
どちらにしても厳しいレースになったのは明らかだった。

そんな中で前方がジワリと動き出す。
澪もグイグイとまではいかないがゆっくり外を回してシロノライデンを進出させていく。
第4コーナーでは中団馬群の一番外。

だが、誤算があった。
先頭集団から中団にかけてもコーナーでばらけて、シロノライデンは想定以上の大外を回されたのだ。
内を突けば囲まれる事を想定して外に出した澪だったが、これは大きな読み違えと言ってよかった。

大外を回されてしまったロスで位置取りは想定より後ろ。
先頭集団はバラけつつも止まる気配は無い。
阪神の坂での叩き合い勝負をする先頭集団にシロノライデンも迫っていくが、やはりロスした分が痛い。
阪神の直線が澪には短く感じたのだ。

それでもトップスピードに乗ったシロノライデンは、先頭集団に食らいついてゴール。
ダイゼンシルバーには届かなかった気はするが、いい所まで迫った気はした。

やや長めの待ち時間。
シロノライデンが2着だった事が表示されたのは暫く経ってからだった。

立ち上がっていた仁藤が大きく息を吐いて椅子にドスっと座り込む。
不利なレースで2着は大したものと言えた。

澪の方は馬上で項垂れていた。
コーナーでの判断如何では勝てたかもしれないレースを落としたと言う気持ちしかない。

馬主席で観戦していた樹里はシロノライデンの2着が確定するとほっと胸を撫で下ろした。
澪に全幅の信頼を寄せているとはいえここまでハラハラするレースは初めてだった。
隣で秘書を務めてくれてる紗英が拍手を送る。

「これで菊花賞に行けるね」
「そうね」

一つの関門を突破した。
馬主初年度でG 1出走・・・
快挙と言って良かった。

紗英の父である叔父、そして樹里自身も父の病床で聞いた話・・・
最後まで健三はシロノライデンとスターライトブルーが走るのを心待ちにしていた。
回復して二頭の活躍が見たいと言いながら叶わなかった。
だからか、数いる健三の所有馬の中からこの二頭は叔父が樹里に託したのだ。
どちらも重賞を勝てるかもと言う所の後一歩まで来ている。
特にシロノライデンのG 1出走は父に見せたかったと、樹里はこのレースを見て更に強く思ったのだった。


菊花賞に向け、後の懸念は澪の勝利数だけだったが、一週間前に何とか30勝をクリア。
最後は栗東の色んな調教師が応援してくれてのクリアだった。
ベテランや所属騎手を大事にしていく美浦のスタイルとは違い、栗東の調教師は若手にドンドンチャンスを与えるタイプだ。
だからベテランもうかうかしてられないし、若手達もチャンスをモノに出来なければ他の若手にその座を奪われてしまう。
今回は澪はそんな栗東の気風を上手く受けて難題をクリアできた訳だ。

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