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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 220

ただ1頭、そんなガーベラに食らいついてきたのは地方勢ではなく、内側で溜めた脚を残していた横平のガルダンサーだった。

自分が海外遠征などでいない時にお手馬の鞍上を任されている後輩が粘り強くついて来ている。
その姿を見るのはいい。
しかし競り合うのはここまでだ。

ガーベラがもう一段ギアを上げて加速する。
それに追いつけるものは誰もいなかった。

鮮やかな勝利。
砂の女帝と呼ばれて久しいガーベラだが、その異名を如何無く発揮したレースだったのだ。


寛子にとってはこれが初めての中央G1勝利だった。
実績のある馬を譲って貰えたからこその勝利だけに、むしろ申し訳ないと言う感覚があるが、やはり勝利と言うのは嬉しいものだった。
しかも妹のような澪が乗っての勝利だけに喜びが倍増であった。

「お疲れ、いいレースだったわ」
「ガーベラがいつも通り走ってくれたからですよ」

もうG1も幾つも勝ち、トップジョッキーの余裕が感じられる澪が労う寛子に笑みを見せる。
今年は驚異の新人、舘悠に話題を奪われた感があるが、彼女も去年に続きリーディングのトップを快走している。
勢いで獲得した去年のリーディングより、今年の内容は遥かに安定感がある。
そして勝ったレースより負けたレースの評価が高く、調教師や関係者から『こんな馬をよくこの順位にしてくれたもんだ』と言われる事も多いぐらいだった。

デビュー当初は乗鞍も多くなく、同期に少しだけだが遅れをとっていた。その焦りがなんとかいい方には向いたが、それまでの自分自身は勝利にこだわり過ぎていたかもしれない…澪はそう感じていた。
ジョッキーとしてまた一皮剥けた澪の成長はまだまだ止まらない。

現役生活に別れを告げたガーベラはラモーヌと共に涼風ファームにやってきた。
ガーベラは涼風ファームの生産ではないが、やってきてすぐにあたかもここが実家という具合にリラックスし始めたと真奈は樹里に報告した。
エリックたちは早くも2頭の看板繁殖牝馬候補の種付け相手を検討し始めている。

そんな涼風ファームの繁殖牝馬には新顔も。
無事ライラリッジの子を受胎したレーシングジィーンの隣の馬房には、ナイスダンサーの子を受胎したウラカワミユキという繁殖牝馬がいる。

レーシングジィーンと同じく、ウラカワミユキも一時預かりてある。
種付けが苦手とか神経質な馬の扱いに以前から定評のある涼風ファームだったが、エリック達が来てから更に評判になっている。
それもあって馬房を増築したぐらいだ。
なので涼風ファームも規模以上に様々な施設を備えていた。

これも白幡グループの業績が好調なのもある。
樹里の代から本業である住販だけでなく、様々な業種を抱える一大グループになっていた。
それは樹里がグループの本業の住販を叔父に殆ど任せ、自分は投資業に重点を置いているのがある。
そうやって投資してきた業種が成功する事でグループが大きくなっていたのだ。
祐志やエリック達みたいな男に翻弄されても、樹里は投資家としては優秀なのだ。

そんな樹里は、涼風ファームの方針はエリックや真奈に大まかは任せつつも、馬の購入より施設の拡充を優先している。
それは樹里が玄人ではないものの、ベースがあってこその馬産だと考えているからだ。

12月にもなると馬房の外は雪景色だ。
それを眺めながら繁殖牝馬と仔馬たちはのんびりと過ごしている。

「シンボリルドルフか、スターライトブルーだったら?」
「甲乙つけがたいが、ラモーヌにスターライトブルーで生まれた子でジュリが勝てばいいことじゃないか?」

エリックとヘンリーはそんな会話を繰り広げていた。

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