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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 219

「次も頼むな」
「はい!先生っ!」

舘の元気な返事に仁藤は目を細める。
クリークも大物になると思っている仁藤だが、この舘悠もきっと大物になるだろうと密かに思っていたのだった。


そして、中京ではチャンピオンズカップが開催される。
こことフェブラリーステークスで引退予定のフルダブルガーベラだが、先にターフを去ったラモーヌとは対照的に好調そのものだった。
まだ来年一杯走れそうな感もあるが、牧場の宝と言うべきG1牝馬を無理に走らせる必要は無いと言う判断だった。

ガーベラは圧倒的な一番人気。
中央勢ではグレースシラオキ、フォスタームサシ、タイガールイス辺りが人気上位だが、随分と格下感があった。
地方からはテツノカチドキ、ワカオライデン、フェートノーザン等、これまでガーベラと戦ってきたライバルも参加。
中央勢の格下感を補って余りあるメンバーが揃ったと言っていい。

ガーベラのデビューから携わり、ラストランを迎えたことに1番感慨深く感じているのが寛子だ。

「ガーベラ様にはいろいろ教えられたわ」
「そうですねぇ」
「噛みつかれたのもいい思い出よね」
「先生、それがなくなって寂しいんですね?」
「そういう時だけ先生呼びはやめてよ…」

パドックでそんな会話をする寛子と澪。

そんな会話から本馬場に出る。
いつも通りうるさい馬だが、本馬場に出てからの動きは抜群。
やはり女帝はどこまでも女帝だった。

今回もいい走りができるぞと期待しながらのゲートイン。
スタートも綺麗に出れた。

先頭に立ったのはタカライデン。
そこにテツノカチドキが追走する。
その後ろに2頭いて、更に後ろにガーベラとフェートノーザン。
更に後ろにはワカオライデン。
東海勢2頭がガーベラをマークして走るのは前にもあったパターンだ。

中央から流れて笠松に移籍した2頭だが、格落ち感はむしろ無く実力を上げているように感じる。
今回は中京でのレースとあってほぼ地元感覚で走っているだけに手強い相手となりそうだ。

しかも中京競馬場はG1こそ開催されるとは言え、中央ではローカルに分類される競馬場だ。
その構造は地方競馬場に近い。
故にテツノカチドキも含め、地方ジョッキーからすれば走りやすいとも言える。

中央挑戦の常連組のレースぶりはこれまでも何度となく見てきているから勝手知ったるものである。
澪も今回のライバルは彼らであると思っていたが…

少し様相の違うレース展開になっていた。
先頭を行くタカライデン。
その後ろにピッタリ着いてきたのがガルダンサー。
さらに追い上げるクラウンマーチ。

熊崎、横平、塩原というこの3頭の鞍上はいずれも澪にとっては後輩にあたる若手たちだ。

彼らと勝負していくのは楽しい。
勝っても負けてもだ。

だが、今回はその若手達に分からせるレースだ。
誰が主役かと・・・

中京のローカルらしい小回りのコーナーを回り、4コーナへ。
そこでガーベラは動く。
澪の指示に即座に反応したガーベラが順位を上げて先頭に並んでいく。
そこにテツノカチドキやフェートノーザン、ワカオライデンが付いて行こうとするが、これは澪にとって想定内。
タカライデンと熊崎は何とか持たせようと腕を動かすが、ガーベラにとってそれは抵抗の内に入らない。
コーナー出口で苦し紛れに膨らむタカライデンの内側をこじ開けたガーベラが一気に先頭に立った。

ローカルの短い直線。
先頭に立ったガーベラが加速する。
大半の馬はどんどんと引き離されて行った。

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