PiPi's World 投稿小説

駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 215
 217
の最後へ

駆ける馬 217

馬場の良い所を狙ってラモーヌを走らせる。
だが、外を狙ったラモーヌやトリクティプは伸びない。
内の先頭集団が粘り、後続は詰めきれない。
そのままルグロリューが先頭で押し切る。
2着にはスルスルと内側から伸びたサウスジェットで、外国馬がワンツーフィニッシュ。
日本勢ではダイナアクトレスが大健闘の3着。
ラモーヌのラストランは6着で終わった。

レース後のインタビューで澪が淡々と答える。
『全てを出し切りました・・・』
その言葉が全てであった。

レース後に引退式が執り行われ、最後の晴れ舞台に望むラモーヌ。
澪と共に牝馬三冠を制した偉業は、最後に勝利を飾れ無くとも色褪せるものではなかった。


リュウノラモーヌの引退で1つの時代が終わった。
その翌週には、また1つの時代が始まろうとしていた。
スーパークリークのデビュー戦である。

仁藤をして、自分の競馬人生で最高傑作となるとまで言わしめた馬・・・
手綱を握るのは驚異の新人、舘悠。
年間60勝と言う新人離れした記録を打ち立てた若き才能に素質馬が託されたのだ。

もともと馬産地からの評判も良かった噂の馬のデビュー戦。
パドックの注目も集まる。

「体調を崩した時はどうなるかと思ったが、無事にデビュー戦まで来れた。だが、これはスタートラインだ」

パドックを闊歩するスーパークリークの姿を眺めながらエリックがつぶやく。

「うむ、やはりいい馬だね」

そこに現れた男性。
スーパークリークの配合を考案したとされるオーナーブリーダー、岡山繁明。

岡山は独自の配合理論を持つ馬産家でもあるが、彼の嗜好が風変わり過ぎて理解者は少ない。
だが、その独自の配合が時折爆発的な効果をもたらす事もあり、理解者は少ないながらも競馬界で一目置かれた存在である。

そんな岡山にエリックは憮然とした表情を見せる。

「体質が弱く、まともに調教できていない・・・正直、よくデビューに漕ぎ着けたと思っている」
「ふむ・・・そんな状況でも一番良く見えるのだがな」

エリックに対しそう答えてニヤリと笑う岡山。
素質はエリックも認めている。
恐らくヨーロッパでデビューさせてもクラシックの本命になれるだけの素質だと見ていたのだ。

だが、反面・・・
脚元の不安と体質の弱さがついてまわっていた。
大柄な馬だけに、余計にデリケートに扱わないと壊れてしまうような脆さこそ、スーパークリークの最大の弱点だった。
そんなデリケートな馬を育成から育て上げたエリック達の手腕は相当なもので、岡山もクリークを見て感銘を受けていたぐらいだ。

同じホースマンとして、強力なライバルでもあるが日本の競馬のレベルアップを図ろうと努力している姿は共感でき、尊敬できる。
エリックもまた岡山のことは吉野とは違ったタイプの人物ではあるがそう感じていた。

パドックでは静止命令がかかり、舘がクリークの元に歩み寄り騎乗する。

今までおっとりとしていたクリークが、舘を背にするとグッと気合いが入ったのが見ていても分かる。
これからレースだと理解しているような賢さに、岡山もエリックも笑みを浮かべる。
この賢さも成功する馬の要素だ。

そして、パドックから本馬場へ。
軽快な返し馬を見せるクリーク。

鞍上の舘は仁藤から『無理せんと回ってくるだけでええ』と言われていた。
デビューしたとは言え万全とは言い難い状況なのだ。

(でも・・・普通に勝っちゃいそうなんだけどなぁ・・・)

そう心の中で呟く舘。
直前の調教でも軽く流すだけで良いと言われた追い切りでマイラー並みのタイムを叩き出している。
馬体も血統もステイヤーそのものなのだが、絶対的なスピード能力が桁違いなのだ。
故に仁藤も無理はさせない方針を貫いているぐらいだ。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す