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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 216

この闘争心をいい方に捉えたいところだが、ラストラン故に無理はさせたくない。
澪の中に葛藤が芽生える。

「状態はベストの時に比べたらだいぶ落ちてる…今回はとにかく無事に回ってこれたらいいなって思ってる」
愛美の口ぶりもこれまでに比べたらだいぶ歯切れが悪かった。

ラモーヌはそれでも日本馬では一番人気の高い6番人気。

15頭立て。
スタートは普通に出た。
レジェンドハンターが快足を飛ばし先頭に立ち、ムーンマッドネスがそれについて行く。
トリプティクは真ん中からやや後方の位置取りで、ラモーヌはそのすぐ前あたり。

調子を落としているとは言え、しっかりと走ってはいる。
決して無理な状況で参戦した訳では無かった。
どんな状況でもベストを尽くそうと走るラモーヌの姿勢は見えていた。

思い返すと、デビューの頃からそうだった。
ラモーヌは常にベストを尽くしてレースに挑んでいた。
牝馬三冠までの圧倒的な勝利を知るファンからは、古馬になってから負ける事も多いラモーヌに色々と言う者もいるが、乗っている澪からすれば勝ったレースも負けたレースも全てラモーヌはベストを尽くしていた。
単純に負けたレースは相手が強かったのだ。
だから、奥原は負けても決して澪を非難する事は無かったのだ。

それだけに引退レースをいい形で飾りたい・・・
そう言う思いが澪には強い。
次の大きな仕事があるラモーヌに無理はさせられないが、できる限りは有終の美は飾らせてあげたい。
それは自分やラモーヌ以上に、奥原や樹里に飾らせてあげたいと思う気持ちが強かった。

軽快に逃げるレジェンドテイオーに、途中からムーンマッドネスが並んでいき並走状態になる。
トニービンを破ったことのある今回の海外勢トップの実力を誇る馬だが、気性の問題もあり今も若干かかり気味だ。

さらにこの先行2頭にルグロリューが接近。
まるで牝馬かというくらいに小柄な3歳牡馬がポジションを上げていく。

前の馬の動きが激しくペースが早い。
澪にとっては予想通りで、ラモーヌの位置取りもそれを想定してのものだった。
調子が良く無いからこそ、脚を溜めないと勝負にならないと言うのもあるが、この早いペースはそれを考えると好都合だった。
最後はなんとか良い順位で終わらせてやりたい・・・
これだけお膳立てか揃えば、更にその気持ちが強まっていた。

コーナーを回り大欅の所辺りから、後続も動き始める。
だが、ラモーヌは動かない。
順位を下げていくが、同じく動かない馬もいた。
トリクティプだ。

このメンバー屈指の切れ味を持つトリクティプが動かない理由は、ラモーヌと同じく脚を溜めているからだろう。
その末脚の切れ味はラモーヌより遥かに上だ。
だから、さきに動きたくなりがちだが、澪はグッと我慢をする。

先頭がムーンマッドネスとなり直線に入る。
ラモーヌとトリクティプは直線入り口でほぼ最後方にいた。

さらにその手前にはダイナアクトレスもいた。
実力派牝馬たちが皆後方に構え、直線勝負に懸けていた。

最後の直線。
粘るムーンマッドネスにルグロリューが並びかけ抜け出しを図る。
3番手以降が若干離され、先行勢は軒並み脚がない。
中団から伸びるのはイアデス、それからサウスジェット。

トリプティクとラモーヌは外を選び、ダイナアクトレスは内側に潜り込む。

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