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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 214

戦術の融通が利くニッポーテイオーは無理に先頭には拘らない。
アイランドゴッテスを行かせて2番手に控える競馬をする。

逆にウィンドサッシュは戦術の幅は無い。
いつも通りの後方からの競馬だ。
何も戦術の幅があるから良い訳では無い・・・
ウィンドサッシュの最大の持ち味である切れる脚を使う為には後方からの競馬が最適であるし、得意パターンに持ち込んでこそ勝機が見えてくる。
ただ、ニッポーテイオーが控えた事でペースが落ち着きそうな事が気がかりではあった。

マイル戦にしては淡々としたペース。
ニッポーテイオーにとっては好条件であった。
アイランドゴッテスをペースメーカーにするように追走し、余力を残して終盤に挑める。
余力さえあれば粘ってゴールまで持ち込めるのがニッポーテイオーの武器でもあった。

そうなると後方の馬は苦しいが、ウィンドサッシュは馬群の中で息を潜めるように追走していた。
焦ってもおかしくない状況だが、横平は落ち着いて乗っている。
それだけ彼も場数を踏んできた証拠だった。

前は軽快に逃げるアイランドゴッテス。
ニッポーテイオーはしっかりそれについて行っている。
並んで追走していたガルダンサーが早々と失速し、サンキンハヤテもやや苦しくなってきたがニッポーテイオーはまだまだ余裕だ。
その背後ではセントシーザーの河井とダイナフェアリーの舘が虎視眈々と迫ってきている。

ウィンドサッシュは中団より後方、馬群の中で脚を溜めていた。

そしてレースは終盤に入る。

アイランドゴッテスにペースメーカーをやらせていたニッポーテイオーが直線に入り先頭に立つ。
そこから後続を突き放す横綱相撲に持ち込もうとする。

ウィンドサッシュは後方の馬群の中。
だが、コーナーでバラけた馬群には丁度良い間隙が生じていた。

横平が鞭を振るう。
その鞭に応えてウィンドサッシュがターフを蹴って加速する。
一瞬の加速で数頭追い抜き、馬群の間隙を縫うように前に出る。
大舞台での経験が横平にこれだけの騎乗をさせるようになっていたのだ。

そのままグングンと加速して追い抜いていくウィンドサッシュ。
残り200mで馬群を抜け出し、先頭が見えてくる。
前にはセントシーザー、ダイナフェアリー、ミスターボーイ・・・
そして、その前にはニッポーテイオーがいる。

いずれも短距離戦線の強豪、必死に粘り込み前を狙って脚を伸ばそうとしてくるが、ウィンドサッシュの伸びがそれを上回る。
先団のライバルを蹴落とし、残るはニッポーテイオー。
今のウィンドサッシュにはそれを捕らえるのは難しいことではなかった。

ゴール手前200m付近で先頭ニッポーテイオーを捕まえた。
ウィンドサッシュは堂々先頭に立って直線を駆け抜けた。

まさかまさかの強襲にスタンドも悲鳴とも歓声ともつかぬ声があちこちで上がる。
負けた郷家も憮然と言った表情。
逆に横平は大きなガッツポーズを馬上で決める。
間違いなくニッポーテイオーに勝つならこのパターンしかない勝利。
切れ味勝負以外でこのマイルの帝王を倒す術は無かっただろう。
余りに鮮やかな勝利に舞い上がる横平は、インタビューでも浮かれ、後で奥原と父親に大目玉食らったのは余談である。


週が開けて暫く。
昼下がりの栗東の仁藤厩舎に寛子が訪れていた。
調教師になった寛子だが、仁藤とは師弟である。
こうやって来るのは珍しい話では無い。

「先生・・・うちの悠を調教に使って頂きありがとうございます」

これも珍しい事ではないが、厩舎所属の騎手が他の厩舎の調教の手伝いをする事がある。
特に仁藤と寛子が師弟関係だからあり得る話だが、こうやって毎度毎度調教師自らお礼に来るのは中々無い。
そんな寛子をニヤニヤ見る仁藤。

「ほんま、濱松先生も調教師らしくなりはったわ」

笑う仁藤に顔を赤くする寛子。

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