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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 212

古馬勢の中ではラモーヌとダイナアクトレスがジャパンカップへ、アイランドゴッテスがマイルチャンピオンシップへ向かった為に、ダイナシュートやダイナブリーズの社来系2頭と、重賞常連馬のユキノローズ。
前走を鮮やかに勝った上がり馬ラブシックブルースが主力。
対する3歳馬は二冠馬マックスビューティと秋華賞馬タレンティドガールが中心。
その中でプチソレイユも実力をつけてきたと言う事で、6番人気と悪い感じではなかった。

京都大賞典からの調整も雰囲気は良く順調そのもの。
ガーベラやラモーヌと比べれば見劣りはするものの、丈夫でハードな調教をこなせる良さもある。
特に胃腸が丈夫で食欲が落ちず、精神的な図太さもある。
それが一流馬に見劣りしながらも、G1まで挑戦できるまでになった原動力の一つなのだろう。

「ここまで来れてなんだか感慨深いね」
「松山さんはずっとプチの稽古につきっきりでしたもんね」

プチソレイユを実力馬に仕立て上げた張本人、松山と澪がそんな会話を交わす。
松山の施したスパルタ的な稽古がプチソレイユには大きなプラスを生み出したと言ってもいい。

「スタートも折り合いもひと頃に比べたら随分良くなった…ここは一発あってもおかしくないよ」

そう言う顔はむしろ『一発かましてやれ』的な表情だった。
それは澪も同じだ。


そして、レースはスタートと共に勢いよく飛び出したプチソレイユがハナをきる。
そしてそのまま先頭に立った。

デビューから先行やら差しやら戦術が定まらないプチソレイユだったが、逃げるレースはこれまでにない。
条件戦では戦術不問で能力で押し切れる事もあったが、逆に相手が強くなると粘れる根性が豊富でもなければ、差し切れる脚も無いと言う中途半端な所があった。
そう言う部分が一流馬に一枚劣る所であり、今まで取りこぼしの多い所であった。

逆に長所と言えるのがリマンド産駒らしいスタミナなのだが、今まではスタミナあれど逃げ切るスピードが無かった。
だが、最近の調教のタイムも上がっている所から、ひょっとしたらいけるかもと思っての逃げ戦術だったのだ。

これは仁藤も松山も考えていた戦術でもある。
ただ競り合いに強い馬では無いから、そこを上手く誤魔化す腕前も要求される。

道中は他に競りかける馬もおらず展開はスローペース。
もしかしたら超のつく程のスローになっているかもしれない。
澪はしてやったりと思いたいところだが、このプチソレイユを番手でピッタリとマークしているのが人気の一角であるマックスビューティ、田沢である。

他にもライバルが多い中でこの戦法。
田沢がどう動くか澪はかなり警戒していた。

プチソレイユが淡々と逃げる中、外回りの淀の坂へ。
マックスビューティは2番手で動かず。
そんな中で一頭、ユウミロクが思い切ってまくって上がってきた。

この辺りは何か来るとは想定していた。
故に澪は勝負をかける。
ユウミロクに煽られて掛かったようにプチソレイユを加速させたのだ。

ユウミロクと共に後続との差が開く。
これも想定通りでマックスビューティは動かなかった。
天才田沢と言う人間は澪には理解不能だが、理解できる部分も少なからずある。
レース前のちょっとした態度から、マックスビューティの三冠目を落としたショックを感じていた。
故に天才と言えど、判断が慎重になるのではと言う想定をしがちだが、逆に天才故に思い切って勝負してくるパターンもある。
それを知る為にここは仕掛けてみた澪だったが、田沢はどうやら慎重な戦術を選んだようで追走してこなかったのだ。

これが名馬に乗るプレッシャーなのか・・・
無論、厩舎サイドで田沢に慎重を促してる部分もあるのかもしれないが、澪は田沢のレース前の態度から迷いを読み取っていた。
これは、澪が勝負師としての嗅覚がトップレベルになってきたから読み取れたとも言え、若くしてリーディングトップは伊達では無い所だった。

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