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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 210

長い写真判定・・・
騎手は体感で勝ったか負けたか分かる事が多いが、この時は郷家も澪も全く分からなかった。
互いが固唾を飲んで電光掲示板を見る中、ようやく確定ランプが灯る。

天を見上げた郷家。
小さくガッツポーズの澪。

「やられたな・・・おめでとう」
「こちらこそ、良い勝負でした」

負けた郷家が澪を讃える。
互いに全力の勝負だったから余計な感情は無かった。

そして奥原もこの結果に思わずガッツポーズしていた。
1200mから2000mまでのG1を勝ってのけるのは、ウィンドフォールの万能性を証明できた結果と言えたのだ。


その天皇賞が終わってすぐ、JBCクラシックが行われる。
開催競馬場持ち回りのこのシリーズ、今年は笠松競馬場で行われる。
中央の女帝フルダブルガーベラと地方の帝王カウンテスアップの一騎打ちかと思いきや、そこに殴り込みをかけてきたのは以外な馬だった。

それは笠松所属の元中央所属の2頭・・・
ワカオライデンとフェートノーザンだった。

ワカオライデンは中央で走り、G 3を勝つなど活躍。
その後金沢に移籍した後に笠松に再移籍。
老いて益々力を増した感がある古豪だ。

そしてフェートノーザンは中央で走り、去年はライフタテヤマやガーベラに及ばなかったものの健闘。
年明けから春にかけて実力を増してきたものの怪我で離脱。
その離脱中に笠松に移籍し、秋から復帰。
復帰後連勝してこのレースに挑んできていた。

この2頭が地元笠松と言う事もあって上位人気に食い込む。
だが、2頭共人気先行ではなく、雰囲気と言い実力と言いカウンテスアップやガーベラに負けないものがあったのだ。


そんなJBCシリーズのレース前。
樹里は祐志に呼び出されていた。

呼び出された所は、笠松競馬場横にある厩舎ゾーン。
その厩舎の一つ、馬房の前に呼び出された樹里。
馬房には灰色の馬体の若駒がいた。

「お前の所のスーパークリークも良い馬だが、これも負けちゃいないぞ」
「どう言う事なの?」
「これのオーナーから買い取ったのさ・・・来年から中央で走らせる」

以前も地方からステートジャガーを買い取って成功させるなど、祐志の相馬眼は中々のものだった。
ただ彼女の前に居る芦毛馬は馬体もさほど映えなく、穏やか過ぎて良いかどうか分からない。

聞けば既に10戦をこなし、8勝。
笠松の2歳馬では敵無しらしい。

「よくオーナーさんが売ってくれたわね・・・」
「今年一杯は笠松で走らせる条件でだがな・・・ただ・・・」

そう言いかけて祐志はニヤリと笑う。

「来年はコイツ・・・オグリキャップに競馬界が震撼するぜ」
「うちのクリーク同様、そうなるといいわね」

余りの大言壮語に笑ってしまう樹里。
だが、樹里もスーパークリークには期待しているから気持ちは分かる。
エリック達の評価だけでなく、生産牧場からの期待、直接見た雰囲気からも、これまでに無い凄さを感じていた。
デビューは12月頃になりそうだが、樹里も来年のクラシックを期待していた。
だが期待しつつもこの時は、祐志の大言壮語が現実となるなど思いもしなかったのだ。

デビューしてからのパフォーマンスは大物感を抱かせるが、血統的にはどうもパッとしない。
父ダンシングキャップは現代の競馬界を席巻するネイティヴダンサー系の種牡馬だが、自身の実績もこれまでの産駒実績も全くと言っていいほどない。

ただ、ネイティヴダンサーは孫の代で爆発覚醒する――という噂を樹里は耳にしたのを思い出す。
ネイティヴダンサーの仔のレイズアネイティヴからミスタープロスペクターが、またネイティヴダンサーは母父としてノーザンダンサーも輩出している。

そしてこのオグリキャップもネイティヴダンサーの孫。

(もしかしたらあるのかしら)

そんな思いを抱きながら、その日のメインレース、JBCクラシックが始まる。

古豪トムカウントが逃げを打ち、今シーズン復活の気配のテツノカチドキとやや調子を落とすカウンテスアップが続く。
その後にアイランドハンターとシナノジョージ。
その後ろにはガーベラが位置し、更に後ろにワカオライデンとフェートノーザンの笠松勢2頭が追走していく形となった。

ローカルかつ狭い競馬場の戦い方も澪は随分理解してきている。
基本は先手先手で動いて行く事であり、その点ではこの位置取りは若干後ろ目ではある。
ただ馬の能力的には悪い位置ではない。
ただ気になるのは地元の2頭だ。

笠松競馬場の傾向として澪が頭に入れているのは、笠松所属騎手は割と強引にハナ争いをすると言う事・・・
だが、今回はそうではない。
むしろこの位置取りは、完全にガーベラをマークする乗り方に感じていた。

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