駆ける馬 206
トランポリノは凱旋門賞勝利の勢いのまま、今度は渡米してブリーダーズカップターフへの参戦を表明。
ラモーヌは樹里と奥原が協議した結果、帰国してジャパンカップを目標とすることに。
ラモーヌの健闘は日本でも大きく報じられた。
吉野ら交流のある馬主からは素晴らしい挑戦だったと讃えられ、樹里は非常に嬉しく、誇らしい思いを持った。
だが、同時にこれが終わりではなく、始まりなんだとも感じたのだった。
今後の打ち合わせや各所の連絡を終えた樹里がホテルの部屋に戻る。
そこでは男女が裸で絡み合っていた。
そこに居たのは祐志と奈帆。
キングジョージ以来、何度か祐志は奈帆を抱きにわざわざアイルランドまで行ってるようで、奈帆も完落ちと言うぐらいまでになっていた。
まあ、これは樹里も経験があるから分かるが、祐志に狙われてここまで執拗にヤラれれば誰でもこうなる。
祐志に抱かれ蕩けきった顔の奈帆をやや苦笑気味に見る樹里。
そんな樹里の方に祐志は顔を向けた。
「ダンシングブレーヴが病魔に侵されたらしいな」
「えっ?!それは一大事じゃない!」
ダンシングブレーヴと言う世界的名馬が病魔に・・・
まだ種付け1シーズン目で、これからと言う所だからショッキングなニュースだ。
「マリー病と言う奇病で命に別状はないが、どうやら体調維持が難しいらしい・・・成績が出せないようなら、殺処分もありえるな」
祐志は奈帆を突き上げながらの会話だが、その言葉はショックそのものである。
「そんなの・・・世界的名馬なのよ・・・それを・・・」
ドバイで見たダンシングブレーヴは圧倒されるばかりの馬体で、その走りも驚異的だった。
その名馬が殺処分とは・・・
競馬界にとっては損失でしかない。
「その件に関して考えがある」
「何?それ」
「とりあえず話をするから、服を脱いで股を広げな」
「・・・どうしてそうなるのよ」
眉を吊り上げる樹里をニヤニヤと見る祐志は、奈帆をイカせて結合を解く。
何度も奈帆を抱いたであろうに、彼の巨根は力を失う様子は無かった。
それを見ながらため息をつく樹里。
結局の所、彼女もそれを見て我慢できる筈も無いのであった。
「・・・買うって、んあっ!・・・か、可能なのっ?、んいっ!」
「答えは、不可能でないが難しいと見ているな」
樹里を突く祐志が出した考え・・・
それはダンシングブレーヴの買い取りだ。
普通なら不可能な世界的名馬。
だが、難病とあれば可能性はゼロとは言い切らない。
「夏から何度かダンシングブレーヴを見に行っていたが・・・あのスタリオンで難病の馬を見るのは難しいだろうな」
横に寝る奈帆の乳を揉みながら祐志が言う。
「今すぐに買えと言ってるわけじゃない。日本の優れたオーナーブリーダーたちとも話し合って決めればいいんだ。お前のとこにはシャダイソフィアを救った腕利きの獣医がいるんだ、病が治るのに自信はないが、日本にいけば、血が途絶えることは絶対にない」
祐志は力強いストロークで樹里を絶頂に導く。
「んはっ……わかった、わ…話がまとまったら連絡する。あなたのほうにもある程度の支援は頼むかもしれないわ…」
「わかってる。任せておけ」
そしてまた深い男女の行為に戻る。
そんな欧州遠征からすぐ。
フルダブルガーベラの南部杯があった。
ここでも宿敵カウンテスアップとの死闘の末にガーベラが勝利。
自走はJBCクラシックの予定となる。
そして秋のG1シーズン。
秋華賞は波乱の結果となる。
二冠馬マックスビューティがタレンティドガールの強襲の前にまさかの敗戦。
タレンティドガールがニッポーテイオーの妹と言う良血とは言え、まさかまさかの敗戦であった。
そんなショック冷めやらぬ次週。
菊花賞が行われる。
ここまで順調に仕上げてきたリトルウイングだが、そこに立ち塞がるように復帰してきたのがサクラスターオーだった。
皐月賞以来の出走であり、万全とは言い難いコンディション。
何とか間に合わせたと言う表現が良いかもしれない。
涼風ファームでも、サクラスターオーのコンディション問題で今シーズンを見送る案も出していた。
だが、オーナーサイドや厩舎からはできるなら出したいと言う意志が強かった。
その考えはエリック達も理解できるだけに苦渋の決断で帰厩させた経緯があった。