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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 204

まだ青さはあるが、一歩ずつ一人前の顔になっていってるようだった。


次の週はレースが目白押し・・・
ウィンドフォールか毎日王冠、プチソレイユが京都大賞典。
更に週明けにはフルダブルガーベラの南部杯。
何よりもビッグレースは、リュウノラモーヌで挑む凱旋門賞だった。

ウィンドフォールは天皇賞、プチソレイユはエリザベス女王杯に向けてのステップレース。
どちらも秋の連戦を考慮してやや馬体重増。

結果は、ウィンドフォールは直線で一旦先頭に立ったものの、ダイナアクトレスに差し切られて2着。
プチソレイユはトウカイローマンに届かずの2着と、惜しいレースだったが調整としては悪くない所だった。


そして、欧州最大のビッグレース。
凱旋門賞である。

本命はキングジョージの後に2連勝でセントレジャーまで制したリファランスポイント。
セントレジャーでスタミナも証明して、圧倒的な1番人気でここに進んできていた。
相手となるのは、ムトト、トランポリノ、トニービン、トリクティプなど強豪揃いであった。

出走12頭、その半数が3歳馬。
3歳は斤量面の恩恵も大きく、テレサという唯一の3歳牝馬は54.5キロ。
年長古馬のトニービンとムトトは59キロだから4.5キロの差。
ラモーヌとトリプティクは57.5キロで、リファレンスポイントら3歳牡馬は56キロ。

「馬格があるから斤量で不利になることはないけど、タフなヨーロッパの馬場でどうかだね」

奥原はしっかり仕上がったラモーヌを見ながら言う。
天気は晴れ、馬場コンディションは悪くない。

いいレースが出来そうだと微笑む澪。
ラモーヌもフォア賞を勝った事で、キングジョージの最下位人気から真ん中辺りの人気にまで上がっていた。
それもあって澪の表情は明るかった。
だが、この後・・・
レースは凱旋門賞史上屈指の狂気に包まれていくのを知る由も無かったのだ。


レースはゆったりとしたスタート。
前評判通りリファランスポイントが猛ダッシュで先頭に立つ。
それを追いかけるのはシャラニア。
ここまでは誰もが展開通りと思っていた。
だが、リファランスポイントを追いかけるシャラニアが先頭を伺うように加速する。

当然抜かせまいとリファランスポイントのペースが上がる。
これも想定内。
普通はこれで殆どの馬がリファランスポイントのペースに潰される事を恐れて速度を緩める。
だが、今回は違った。
シャラニアが潰れる事を考慮せず、先頭争いを挑んだのだ。

リファランスポイント鞍上のゴーウェンが舌打ちをする。
連戦続きで心身共に疲弊したリファランスポイントがシャラニアに苛立っているのだ。

プライドの高い彼は、先頭を譲る事を良しとしない・・・
それだけでなく、心身共に疲弊していた彼はプライドを汚そうとするシャラニアに苛立ち・・・
己の持つリミッターを解除したのだ。

苛立ちに咆哮し、更に加速するリファランスポイント。
それでも食いつくシャラニア。
ペースは更に加速し、それはまるで短距離戦でも無いようなハイペースとなっていく。
だが、それで終わりでは無い・・・
狂気の加速を続けるリファランスポイントに引き摺られるように、馬群もそれに追従していったのだ。


これは明らかに狂気のハイペースだった。
レースが狂気に支配される中、澪とラモーヌは後方集団にいた。
側にはトリクティプとトランポリノ。
ハイペースについていけなかったと言うより、あえてここまで下げたのだ。

澪の脳裏に一頭の馬が思い浮かぶ。
スターライトブルーだ。
頑固なまでに先頭に拘った彼も、どこかリファランスポイントと似ていた。
彼を知っていたからこそ、澪は先頭集団の狂気に呑まれなかったのだ。

限界を超えた走りについていけば大変な事になる・・・
故に4番手辺りでレースを始めた澪だったが、ペースが上がるとズルズルと後方集団まで位置を下げたのだ。

ただ、ここに居る馬達はリファランスポイントの狂気に呑まれていない上に、ワールドクラスの豪脚の持ち主ばかりだ。
末脚勝負となればラモーヌはトリクティプやトランポリノの豪脚には及びはしないし、少し前を走るトニービンにも敵わない。
狂気のハイペースに後半勝負と読んだ澪だったが、末脚勝負で勝てるかと言われると中々難しい。
とは言え、先頭集団に追従するのもあのハイペースだと無理・・・
澪にとっては難しいレースになっていったのだ。


そんな風に悩む澪を他所に、リファランスポイントは限界の更に上の走りで逃げていく。
だが、シャラニアはどこまでもしつこく食いつく。
ここまでリファランスポイントに今まで食いついた馬はいない・・・
故にプライドを傷つけられたリファランスポイントは、更に狂気じみた加速を続けていったのだ。

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