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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 203

「これだけ気の勝ったタイプなら短い距離のほうが正解だな」
「まあ何よりGTジョッキーが乗ってくれるのが心強いですよ」

今回は愛美と宮沢で2人引きの形をとったパドック。
特にひどくイレ込むわけではないが、奥原が念のために取った策だ。
それにこの2人が厩舎で一番馬を理解している。信頼できる2人だ。

やがて横平がウィンドサッシュに跨り本馬場へと駆けていく。

「頼もしい背中になったな」

一人前の騎手になりつつある甥の背中を目を細めて見る奥原。

そんな風に送り出したレースは、予想通りキッポウシが逃げアイランドゴッテスが追いかけると言う京王杯組が引っ張る展開。
ミスターボーイは中団の前目、ウィンドサッシュは後方集団にいた。

電撃戦と呼ばれる1200mの短距離戦。
先手を取るのが勝利のセオリーであるが、ウィンドサッシュは後ろから。
リスクは大きいものの、この馬の良さを引き出すのには後ろからがベストだろう。
何より横平が自信を持って乗っている。

短距離戦らしく高速ラップでレースが推移していく。
とは言え、このペースは先行馬に早すぎる訳では無い。
同じ距離のG1、高松宮記念だとこのペースで先行馬が止まらないのだが、ここは中山である。
直線の急坂のせいで、前も後ろにも充分チャンスがあるのだ。

軽快に飛ばすキッポウシに、アイランドゴッテスが並びかける。
4コーナーの手前。
最内からダイナフェアリーが脚を伸ばし、間にマルブツロンリー。
馬群を割るようにしてミスターボーイ、さらに外からセントシーザー。
ウィンドサッシュは一番外に持ち出した。

少々のロスは覚悟だが、開催最終週の馬場でハイペースなら、十分届くと横平は踏んでいた。

直線は数頭がびっしり横並びになるハンデ戦のような激戦と化した。

横平は余り物事を考えるタイプではない。
直感と閃きが彼の持ち味だ。

本来なら闘志に火を点ける為に馬群に突っ込ませた方がいいウィンドサッシュを、あえて外に出したのも彼の直感だった。
勿論、それが裏目に出る事も多いが、今回はこれが功を奏した。

一頭だけグングン伸びるウィンドサッシュ。
開催最終日で程よく荒れた内側に比べ、外側のコンディションは抜群であった。
ここを使ってグイグイ伸びるウィンドサッシュ。
自慢の瞬発力で中山の坂の半ばで先頭を捉えた。

そして中山の急坂も関係ないが如く、先頭に立つと更に加速。
半馬身、そして一馬身と差を広げたのだ。

ダイナシュートやミスターボーイも必死に食らいつくが、差は開くばかり。
秋の電撃戦は、ウィンドサッシュの豪快な牛蒡抜きで幕を閉じたのだった。

「さすが!天才だな〜」
「あの騎乗はアンちゃんには出来ないぞ」

愛美と宮沢はウィンドサッシュと共に引き上げてきた横平を盛り立てながら出迎える。

「いやあ…展開が向いてくれたのと、馬がいい反応をしてくれたからですよ」

照れ臭そうな笑みを浮かべながら横平はそう答えた。

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