PiPi's World 投稿小説

駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 200
 202
の最後へ

駆ける馬 202

相手関係からして強豪揃いだが、決して勝てない訳では無い。
澪も自信はもっていた。

そして、ゲートに入った瞬間、澪の顔に笑みが浮かぶ。
春のリトルウイングなら、ゲートに入ればソワソワする感じがあった。
基本的に馬は狭い所が苦手なので、ゲートは本来苦手な場所だ。
それ故にゲートの試験があり、それをクリアしないと競走馬になれない。
ゲート試験をクリアできず、競走馬になれない事は決して珍しいことでは無い。

だが、今のリトルウイングはゲートの中でも落ち着き払っていた。
例に漏れず、今までのリトルウイングのゲートは澪も結構気を配っていたのだが、自ら率先してゲートに入り、落ち着いて発走を待っている様は別の馬かと言うぐらいだった。
これだけ精神的に逞しくなるとは・・・
澪は半ば感動しながらも、更に勝利の自信を深めたのだった。


ゲートが一斉に開くと、綺麗なスタート。
そこまでスタートの上手い馬では無かったが、それすらも改善されている気もする。
全くストレス無く4番手辺りに付ける事ができた。

ゴールドシチーの金色の馬体はいつものように最後方あたりを追走。その手前にニホンピロマーチ。
彼らの直線での脚は脅威だが、ペースが落ち着けばこちらが抜け出して踏ん張り通すことができる。

むしろ不気味なのがリトルウイングをマークしてくるレオテンザン。
この馬の鞍上は、舘だった。

無邪気で屈託の無い舘の笑顔が思い浮かぶが、騎手舘悠はそうではない。
騎乗技術が新人離れしているだけでなく、こう言う厭らしくクレバーな騎乗もできる。
そして、何より徹底した勝負師なのであった。
勝負への執念はベテラン達ですら舌を巻く程であり、新人ながらリーディング上位に食い込む程勝てているのもその勝負師根性故だ。
あらゆる意味で恐るべき新人なのである。

春までのリトルウイングであれば、この位置に舘とレオテンザンに付けられると嫌だったであろう。
だが、今のリトルウイングならナーバスになる必要すらない。
過敏なぐらい周囲を気にした馬が、今は泰然自若で走っているのだ。
そんな馬の上で澪が狼狽えてしまえば逆に騎手失格だ。
そんな澪の顔には笑みが浮かんでいた。

馬に任せてコーナーを回り、そして直線に向かう。
中央の競馬場の中でも中山と並び急坂を誇る阪神の直線。
数々の先行馬を泣かせてきた直線にリトルウイングは4番手のまま差し掛かる。

直線に入るとリトルウイング自身にスイッチが入り、それに澪がさらに点火させる。
直線半ばに入るとぐいっと一伸びして先行する数頭を捉え、先頭に躍り出る。
レオテンザンがそれを追いかけるが、その差は縮まらない。むしろ開いていくほど。
ニホンピロマーチやサニースワローはさらにその後ろ。

リトルウイングは堂々秋初戦を勝利で飾った。

これで菊花賞に向けて良い調整となった。
仁藤も澪も自信を深めた一戦だったのだ。


そして、秋のG1シーズンの始まり。
まずはスプリンターズステークスである。

ステップレースのセントウルステークス勝者のミスターボーイ、そして京王杯勝者のウィンドサッシュ。
この2頭を中心にポットテスコレディ、セントシーザー、ダイナフェアリー、アイランドゴッテスとスピード自慢が集結した。

ウィンドサッシュはミスターボーイと拮抗する2番人気。
今季も好走と惜敗を繰り返すミスターボーイだったが、前走の内容からここでは1番人気に推された。

対するウィンドサッシュも好気配。
牝馬らしく多少うるさい所は見せるが、むしろこれは気合が乗っている証拠だ。
鞍上は引き続き横平が務めるが、彼もG1の雰囲気に飲まれる事も無く堂々としていた。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す