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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 3

「私はこの仔に賭けたい」
人懐っこく擦り寄ってくる仔馬と戯れながら、樹里は奈帆に言った。

「出来ることなら何でも言ってね。父がお世話になった牧場なんだから、簡単に畳ませるわけにはいかないわ」
「ありがとうございます」
奈帆は仔馬を撫でながら樹里に笑顔を見せた。

「……お馬さんは可愛いけど、ちょっと寒いね」
「中でゆっくりしましょう。たぶん、向こうも終わったと思うので…」

そんな奈帆を見ながら樹里はある決意をしていた。
それは父が計画したがなし得なかった事・・・
奈帆の性に対するどこか慣れきった様子からも、そうした方がいいと思ったのだ。

そして、奈帆に案内されるまま住居兼事務所に向かう。
そこには幸子と真奈が居た。
五十前の幸子は艶やかで色気があり、まだまだ女盛りに見える。
真奈も同じく艶やかで色気があり、随分年上に見えてしまう。
それもあんな光景を目にしたからそう思ったのだろうか。

「白幡のお嬢さん!よく来てくださいました!!」

少し驚きつつ迎えた幸子と真奈。
どこか行為の名残り香が残ってる気がして、樹里は少し焦りつつ平静を保とうとする。

「突然のお邪魔失礼します・・・今日は子馬の様子と今後の事を話しに来ました」

まだ北海道は少し寒さが残るシーズンだが、早い所は種付けも始まる頃合いだ。
出産の終えた涼風ファームも当然だが次の種付けを考える時期でもある。
それはつまり、種付け料と言う安く無い資金が必要な時期でもあった。

少し雑談をしながら様子を伺う樹里。
すっきりとした室内・・・
いや、すっきりとしてるのではなく、売れるものは全て売ってしまったのだろう。
後、売れるものは身体しかないと言う所か。

「お二人に今後の事を話す前に、父の遺言を伝えなければなりません」
「えっ・・・白幡会長の遺言ですか?」

驚いた様子だ。
ただ、そんな遺言は実は無かった。
樹里の考えた事だ。

「涼風ファームと彼女達は私の宝物だから絶対に守れと」

その言葉に幸子と真奈が驚きながら涙目になる。
それで樹里も察した。
あの男が言った父とこの二人が愛人関係だったのは事実だろうと。
では、奈帆の父も恐らく・・・

「故に、この涼風ファームは白幡ホールディングス傘下の牧場として、お二人に任せます」

つまり、樹里の決意はオーナーブリーダーになる事だ。
普通にやっても涼風ファームの再生は無理だ。
彼女達が身体を売っても遅かれ早かれ牧場は維持できない。
最後は幼い奈帆まで犠牲になるのは確実だ。
だが、当然オーナーブリーダーとなると樹里に今まで以上の資金負担が増える事になる。

幸いにも社業は至って順調だし父の遺産も困ってしまうくらいある。父の部下である今の重役たちも好意的に受け止めてくれている。それを確認した上での単身北海道入りなのだ。

「必要経費はいくらでも出します。むしろ出さないと強い馬は生まれないでしょうからね」

真奈は驚き目を見開く。
幸子の方は感極まり涙が止まらないと言う具合だ。

「私は競馬の知識に関しては素人なのでさまざまな方針についてはお二人の意見を取り入れていきます。お力を貸してください」
「もちろんです!ありがとうございます…」
真奈が頭を下げる。
涙声ながらも、そこには笑顔が見えた。

「えっと…それで、実は来週にも涼風ファーム生産のシロノライデンがデビューを迎えるんです。ダイコーター産駒の3歳牡馬で…」

ダイコーターはシンザンと同じヒンドスタン産駒。
勝ち鞍に菊花賞があるものの古馬になってからの低迷から種牡馬としては期待されていなかった。
だが、数少ない産駒が内国産種牡馬低迷時代にあっても好成績で、涼風ファームのような零細牧場にとっては救世主のような存在だった。
だが、期待していたシロノライデンは500kgを超える大型馬だった事もあり仕上がりは遅れに遅れて年を越してしまい、一頭でも多く走ってくれないと立ち行かない涼風ファームの財政悪化の一因にもなってしまった。
それは樹里にとっても誤算で、まさか皐月賞が終わる頃にデビューになるとは思いもしなかったのだ。

その皐月賞は、一頭の馬が衝撃をもたらしていた。
ライバル達を子供扱いするような理想的なレースで隙すら与えなかったその馬・・・

シンボリルドルフ

昨年も三冠馬誕生で競馬界は沸いたが、新たなスターホースの風格はそれを凌駕するとも言われるまでになっていた。

シロノライデンはそんなスターホースとは比べ物にならないが、樹里は結構期待していた。
大きな馬体と悠然とした風格は何かやってくれそうに感じていたのだ。

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