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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 196

一瞬焦る澪。
失ったポジションを取り戻そうと手綱を動かそうか、それとも腹を括って後方から行こうか、迷いが生まれる。

これが欧州の名手たちとの差なのかと痛感してしまう。
幸いなのはラモーヌがそこまでムキになって走っていないことだろうか。

それならば、澪のやるべき事は・・・
最終コーナーをどう回るかだ。

ヨーロッパの名手達は、このキツいカーブを遠心力など無いかのようにスムーズに回らせていた。
日本の騎手の殆どはこんな芸当出来ないし、澪も出来なかった。
これが現時点での騎乗技術の差なのだが、どうやってそれを埋めるかの方法は無くは無い。
本人にそこまで自覚は無いが、その辺りに思いが行く辺りは澪が非凡である証拠だ。

そして導き出した答えは2つ。
スムーズに回る為に速度を落とすか、外に振ってしまうかだ。
速度を落とせば、位置取りは後ろになり過ぎるし、大外に振られてしまえばロスが大きい。
どちらも不利は確実であるが、最終コーナーまでにどちらかに腹を括らねばならない。

澪が悩んだ挙句、導き出した答えは・・・

腕を動かし、ラモーヌを加速させる。
最終コーナーまでの直線区間で位置を大きく上げて、リファランスポイントに迫る2番手に順位を上げた。
外側にはセレスティアルストーム。
つまり、澪はこの2頭の曲がり方をトレースしてコーナーを回るつもりなのだ。

まったく経験が無くて知らないなら、他人の真似をすればいい。
澪はここでもある意味で腹を括ってラモーヌを導くことにした。

小頭数だから、ペースは落ち着く。
こういう時は日本なら前残りでヨーイドンの競馬だが、ここでもそうなるかはわからない。
むしろ中盤にかけて、馬群が凝縮されてきた。

そして問題の最終コーナー。
外側のセレスティアルストームのお陰で上手く小回りできたのは幸いだったが、思った以上に前が狭くなってしまった。
そのセレスティアルストームの鞍上の手が動く。
このまま加速されてしまえば、ただでさえ狭くなった間隔を絞られる可能性があった。
地方競馬でも何度もやられたが、特に話し合わなくとも余所者を潰す事はどこでもある事を澪も体感していた。
故に少し早いタイミングだが、澪もラモーヌにゴーサインを出した。

やはりと言うか、リファランスポイントが少し外に振ってきた。
もし馬体を合わせていなければ前が塞がれていただろう。
外からはセレスティアルストームが並びかけ、3頭並んで直線に入る。
追い比べでもラモーヌは相当やれる自信はあった。

並んで走る3頭。
セレスティアルストームとラモーヌは目一杯追って、リファランスポイントを交わそうとする。
そして、そのリファランスポイントは・・・
まだ目一杯も追っていなかった。
目一杯の2頭に対して、リファランスポイントとの距離は全く縮まらない。

そして、リファランスポイントに鞭が入ると、グンと加速していく。

逃げたにも関わらず、凄まじい二の足。
半馬身まで迫った2頭だったが、一気に一馬身離されてしまう。
昨年の欧州王者、ダンシングブレーヴと並ぶと言われてる実力を目の当たりにして、澪も驚くしか無かった。
澪も鞭を入れるが、ラモーヌは既に目一杯。
ジリジリと離され、セレスティアルストームとも差が開いて行ってしまった。

これが世界との差か・・・
追えど届かない差。
届かないどころか、差は開いていくばかりだ。
それどころか後ろから怒涛の勢い。
トリクティプが来たのだ。

幾度か戦って知っている驚異的な末脚。
ゴール前でその末脚に捉えられ、一気に交わされる。
そのトリクティプの後にラモーヌはゴール。
勝てなかった。
戦術的にも迷いばかりで自分に良い所が無かった。
澪のヨーロッパ遠征初戦は後悔の残るものになってしまったのだ。


澪は後悔ばかりだったが、見ている日本の関係者達にとっては快挙だった。
本場のビックレースで上位入線・・・
それだけでも快挙なのだ。

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