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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 194

直線に入って先頭に立ったのは、スズパレード。
そしてシロノライデンだった。
明らかに普段から考えれば早すぎる仕掛け。
だが、力強い伸びで阪神の坂を駆け上がる。

シンブラウンはここで脱落。
この馬が比較的良いペースで流れを作ってくれたお陰か、前の馬は余力充分。
スズパレードが抜群の手応え。
ライデンと並んで先頭を走る。

だが、先頭集団の中でニッポーテイオーの脚が鈍い。
やはり距離の壁か、思った程伸びる感じは無い。

逆にウィンドフォールは澪の指示に軽快に応える。
ジリジリと先頭との差を詰めて、残り100mで馬体が並ぶ。
後ろから迫ってくるものは無い。
体勢はスズパレードが有利。
ライデンは首差で追うが距離は縮まらない。

澪とウィンドフォールは必死に追う。
スズパレードに並んでいた馬体が少しずつ抜かすと、前へと差を広げていく。

ゴールした時はクビの差。
きっちり差し切った澪はウィンドフォールの上でガッツポーズして見せたのだ。

そんな中、クールダウンを終えた田沢とライデンがコースの奥で脚を止めた。

そして馬から降りた田沢。
程なく馬運車が到着し、ライデンが乗せられていく。

騒然とする競馬場。
この状況に澪も樹里も勝った喜びに浸れる状況ではなかったのだ。


獣医の診察を終えた仁藤が樹里の所に来る。

「田沢の責任ではないんで、責めんでやってくださいオーナー」

まずそう切り出す辺りが仁藤らしい。
田沢によると、スタート直後から違和感があって、ライデンが相当興奮していたようなのだ。
元々はおっとりした馬だったものの、加齢と共に気の悪さを見せるようになってきたライデンだったが、今回は田沢ですら抑えきれない程興奮していたのだ。
獣医によると、恐らく脚の痛みを抱えたままのレースだったようで、それ故に普段より早いペースで走ったようなのだ。
要は一刻も早く痛みから解放されたくて、レースを早く終わらせたかったのかもしれない。

「もうそろそろ良い頃合いじゃないかと・・・これだけの成績も上げたのだし」

故障を癒し、再び走れるまでの期間を考えると、もうこれは引退の頃合いなのかもしれない。
仁藤がそう言うのは、種牡馬としてのライデンの将来を考えての事だ。

「そうですね、今までよく頑張ってくれました」

シロノライデンはダイコーター産駒。
さらに遡るとヒンドスタン、ボワルセル…シンザンと同じ父系。
決して主流ではないこの血統を残していく使命もある。

「この仔の産駒を先生のところに預けられたら」
「ええ、私もそう思っています」

その頃、澪は表彰式。
G Iを勝った嬉しさは何処かに行ってしまった気分だった。


そんな宝塚記念から数日後、大井競馬場で上半期最大のダートの祭典、帝王賞が行われた。

女帝ガーベラが大本命のレースであったが、地元大井の王者カウンテスアップの前に差しきれず2着。
これは勝ったカウンテスアップが強かったと言わざるを得ない結果となった。


そして、ラモーヌにとっては大勝負。
キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスである。
2ヶ月前から現地で調整してきたラモーヌだが、調子はすこぶる良く当日を迎える事ができた。
共に調整してきたトリクティプとレースに向かう事になる。

だが、昨年のシリウスシンボリの惨敗のせいか、現地での人気は最下位であった。
それもその筈、鉄の女トリクティプを初めとして、トニービン、アカテナンゴ、ムーンマッドネス、セレスティアルストームと、メンバーは強豪揃い。
更に今年は昨年のダンシングブレーヴと並ぶ歴史的名馬になると言われている希代の逃げ馬が参戦していた。
英ダービー馬リファランスポイントである。

すでに「ミルリーフの最高傑作」という評価がなされているイギリスダービー馬。
前走のエクリプスステークスでは2着に敗れてはいるがこの時の相手も強豪ムトト。

「調子はすこぶる良いし、評価が低いなら気楽に乗ってくれば良いよ」

奥原はそう澪に言う。

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