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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 193

4コーナーでもまだ最後方。
そこから馬場の外に持ち出してようやく舘は手綱を動かした。
そのほんの僅かな動きだけでオータムリーヴスは反応し、ぐんと加速したのだ。

前との差がみるみるうちに縮まり、直線半ばを過ぎたところで先頭を捉えるとそこからさらに加速して快勝。
スタンドはどよめくが、鞍上は涼しい顔だった。

ニコニコと帰ってきた舘は、検量室前で待ち構える優菜に馬を託しながら降りる。

「いやぁ・・・距離が長かったです」

屈託ない笑顔で言う言葉は、勝った騎手の言葉じゃない。

「ちゃんと勝ったじゃない?」
「あんだけ後ろから脚を溜めないと無理でしたよー」

優菜も彼の才能が人並み外れている事は理解していたが、距離が長いからと出遅れまでする騎乗に身震いしてしまった。
彼女からすれば、澪も天才だった。
ただ彼女の凄さと舘の凄さは全く異質なものと感じていたのだ。

とは言え、この時期にこの距離を走れたのは大きい。
次は少し距離を控えて試してみる事になったのだ。


そして、宝塚記念である。
ミホシンザンが欠場とあって、本命は田沢騎乗のシロノライデンとなる。
それに続きニッポーテイオーとスズパレード、そしてフレッシュボイス。
ウィンドフォールはその次と人気を落としていた。

とは言え、奥原は自信を持って送り出している。
人気を落とした事を聞かれて珍しく怒ったぐらい、彼は今回自信を持っていたのだ。

この距離も長いのでは?という質問も投げかけられたが、折り合いに不安もないし状態も申し分ないし、何より鞍上を信頼しているから問題はない、と奥原は返している。

澪も同様で、人気がないならあっと言わせて見せるくらいの気概を持っていた。

レースは8歳の古豪シンブラウンが果敢にハナを叩く。
ニッポーテイオーがそれについて行っての2番手、スズパレードがその後方好位集団。
ウィンドフォールはスズパレードのすぐ後ろにつけた。
そしてフレッシュボイスはスダホークとともに最後方。
シロノライデンもそのあたりに位置していた…はずなのだが、なんと今回は先団グループまで上がってきたのである。

ウィンドフォールとほぼ変わらない位置を追走するライデン。
巨体の上にストライドの大きいライデンは、先行に付いていくのが不利な馬なのだが、田沢は難なくこの位置をキープしていた。
澪の場合、ライデンの欠点と長所を考えた上での後方待機なのだが、田沢の頭の中では違う方程式が組み立てられているのだろう。
そう言う所が天才の天才たる所以だ。

ただ、この田沢に目を奪われると自分のレースが出来なくなる。
澪の戦術の基本は安田記念と同じ。
3コーナーから前を捉まえに行き、4コーナーで先頭を伺える位置に持っていく。
後は競り合い勝負にすれば勝機はあると思っていた。
正直、ライデンの末脚は怖いと思っていたが、前に位置してしまったら、いつもの末脚は発揮できないだろうと見ていた。

そして恐らく、ニッポーテイオーとスズパレード辺りは澪とほぼ同じ戦術。
3コーナー辺りからスズパレードが動き出して前に詰めていく。
それに合わせるようにウィンドフォールも上がっていくが、その外からはライデンが同じように付いてきたのだ。

逃げるシンブラウンもまだ余力がありそうだし、ニッポーテイオーも我慢させながらその時がくるのを待っている。

4コーナーでは一瞬だが5頭が横一線になる光景が見られたのだ。

抜け出すのはスズパレード。
その内からニッポーテイオー。
シンブラウンもよく踏ん張っている。
ウィンドフォールは外から追って並ぼうと脚を伸ばし、さらに外にシロノライデンがいる。

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