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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 191

展開としては最良の戦術。
ニッポーテイオーが中距離をこなせるように、ウィンドフォールも中距離は充分にこなせるスタミナはある。
むしろ怖いのは後ろだ。
こちら向こうも瞬発力勝負を避けたいのは同じだろう。

長い直線だが、直線入口でニッポーテイオーに並びかける。
後はウィンドフォールの粘りを信じるしかない。
勿論、ニッポーテイオーもまだ余力充分で、ウィンドフォールを半馬身離して鞍上が追う。

ウィンドフォールと澪も追っていく。
ジリジリとだが、差は詰まっていっていた。
ウィンドフォールもニッポーテイオーも瞬発力勝負が苦手なのも同じだが、競り合い勝負に絶対の自信を持っているのも同じ。
馬体を合わせると互いが闘志を燃やして走っているのが分かるぐらいだった。

残り300mでニッポーテイオーと差が無く並ぶウィンドフォールだが、ここからのニッポーテイオーはしぶとい。
ウィンドフォールが少し先に出たと思いきや、ニッポーテイオーが差し返す。
そしてウィンドフォールも負けじと差し返す。
まさにデットヒートだった。

澪も必死に追ったし、ニッポーテイオー鞍上の郷家も剛腕と呼ばれるだけあって簡単には先頭を譲らない。
2人の意地が、プライドがぶつかり合ったデッドヒート。
馬体をびっしり併せてそのまま……

……とはいかない。
後方から1頭、物凄い脚でこの2頭を差し切らんとばかりに追いかけてくる馬がいた。
フレッシュボイスだ。

予測はしていた。
ニッポーテイオーとの叩き合いをすれば、こうなる予測はあったものの・・・
フレッシュボイスの脚は予想以上だった。

ウィンドフォールもニッポーテイオーもフレッシュボイスと同世代。
何度も戦って、その末脚の鋭さは理解している。
この世代では最強級の瞬発力は、澪も郷家も共に警戒していた。
故にお互い余力は残したかったものの、余力を残せば互いにやられかねない。
それ故、もう後は互いに馬を信じるしかない。

残りは100m程。
必死に追うウィンドフォールとニッポーテイオーに差はない。
猛然と追い込むフレッシュボイスとの差は、僅か一馬身。
剛腕柴原の鞭が唸る。
その鞭に応えて駆けるフレッシュボイス・・・
ゴール板を駆け抜けるのは、ほぼ同時だったのだ。

天を仰ぐ郷家。
唇を噛む澪。
騎手だから分かる感覚・・・
きっちり差し切られてしまっていた。

ウィンドフォールはニッポーテイオーにも届かなかった。
力を出しての3着に納得はするが、悔しさは残る。

「よく頑張った」

引き上げてきたウィンドフォールと澪を奥原が称える。

「最後は脚が上がってしまいました」
「仕方ないね。正攻法の競馬をしたわけだから。良馬場だったらもう少し違ったかもしれないね」

言葉少なに引き上げる澪。
悔しいのはわかる。
奥原はそれと同時に手ごたえも感じていた。

「オーナーにとっては2頭出しとなりますが・・・ウィンドフォールも宝塚記念に登録しようと思っています」

奥原の口から出た言葉。
むしろこのマイルの戦いで、中距離での戦いの目処がついたと奥原は思っていた。

「先生がそう言うなら異存はありませんわ」

樹里は奥原を信用しているからこその言葉だった。
こうして、宝塚記念はシロノライデンとウィンドフォールの2頭で挑む事になったのだ。


残す上半期の大レースが帝王賞と宝塚記念となった頃。
今年の3頭の2歳馬のデビュー戦も決まりつつあったが、最も期待をしていたスーパークリークが重度の下痢でリタイア。
夏シーズンは涼風ファームで休養し、秋以降のデビューを模索する事になった。

そんな中、最も仕上がりが早かったのが濱松厩舎のトウショウボーイ産駒の牝馬、オータムリーヴスであった。
トウショウボーイ産駒らしく軽快でスピード豊か・・・
調教のタイムもこの時期の2歳馬の中でトップクラスであった。

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