PiPi's World 投稿小説

駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 187
 189
の最後へ

駆ける馬 189

リトルウイングも、その馬体からマイル当たりが適距離と言われていたし、実際真価を発揮するのはマイルから2000m辺りだと澪も考えていた。
だが、精神的な成長が思った以上に早く、もしかしたら折り合いさえつければ2400mは走れない距離では無いと見ていた。

それに皐月賞は負けたとは言え、ダービーに進んだメンバーを考えれば、明らかに力負けするような相手はいない。
マティリアルやゴールドシチーも実力馬であるが、こちらが決して劣ってるとは思っていなかった。


そんなダービーのスタートが切られる。
先頭はトチノルーラ。
リトルウイングは前から8番手と中団の位置を選択。
所謂ダービーポジションと呼ばれる辺りだ。
おおよそこの位置だろうと考えていたのもあるが、展開的にもすんなりと位置取りできたのは大きかった。
お陰で澪も高揚感が落ち着き、リトルウイングもリラックスして走ってるように感じれた。

内側にはマティリアル。
この馬はいつもよりも前めのポジションにつけている。
ゴールドシチーは後方待機策。
さらに後ろには田沢鞍上のニホンピロマーチがいるが、今回の彼の戦略はどう出るのか。

3コーナーを過ぎ、4コーナーに差し掛かるあたりで逃げるトチノルーラーを追いかけていた馬が苦しくなって後退。
その間隙を縫って先頭を捉えに行ったのはメリーナイスだ。

それと同時に他の馬も前へと押し上げて行く中、リトルウイングは8番手辺りをキープしていた。

だが、有力馬のマティリアルは順位を上げるどころかズルズルと位置を下げ、ゴールドシチーはまだ後ろのまま。
リトルウイングはまだ余力を残しているものの、マティリアルやゴールドシチーはもう左程余裕が残っていないのかもしれなかった。

直線に入り、メリーナイスが早くも先頭に並びかける。
リトルウイングは変わらず8番手程の位置だが、澪はまだ仕掛けない。
後続の馬も追い上げる中、持ったまま追走していった。

残り300mでメリーナイスが先頭に立つ。
その頃合いで澪はリトルウイングの手前を変え鞭を入れる。
グンとした加速。
瞬く間に2頭程交わして行ったのだ。

瞬く間に先頭との差を詰めて、完全にメリーナイスとの一騎打ちに持ち込む。
後方からはニホンピロマーチ、それにサニースワローの伏兵2頭が追ってくるがそことは差が開いていた。
勢いはリトルウィングが勝っているが、メリーナイスもしぶとく頑張っている。
並びかけたところでゴール。

澪が唇を噛む。
届かなかった・・・
ほんの僅か届かなかった。

リトルウイングは頑張ったのだ。
距離の限界と思っていたのだが、それをものともせず走り抜いた。
惜敗であったが、この距離の融通性はビックリしてしまったぐらいだ。

ノーザンテースト産駒は三度成長する・・・
そう言われる程、成長力に富むノーザンテースト産駒だが、その底力を見た気がする。
マイルから中距離と見ていたリトルウイングの距離適正も、その成長力で覆してしまっている。
これなら秋に、もしかすると菊花賞で勝負できるのでは無いかと思ってしまう。

そんな思いを持ちながら、澪は検量室に戻って仁藤と顔を合わせた。

「先生・・・秋は・・・」

レースの事で無く秋の話を口に出す澪。
その言葉が澪の気持ちを全て物語っていた。

「菊に行くで・・・澪」
「はい!」

仁藤の思いも同じだ。
そして、仁藤は長距離の仕上げを最も得意としていた。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す