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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 182

このペースなら最後に脚を伸ばして届かせることができる…若い鞍上はそんな自信も抱きながらじっくり中団でレースを運んでいく。

数頭が飛ばしていく中で馬群は3コーナーを通過し、4コーナーに差し掛かる。
マックスビューティは先頭グループの背後にピッタリくっついて今にも抜け出す手ごたえだった。

自然な動作でマックスビューティが先頭に取り付き、直線で並ぶ。
特に仕掛ける動作も無く、スルスルと先頭に並んだマックスビューティが直線に入ると頭ひとつ抜け出した。

その時、横平は冷静に前が見えていた。
ウィンドサッシュが直線に入るのと同時に鞭を入れる。
機敏に反応し、加速するウィンドサッシュ。
だが、横平は空いている外では無く、ごちゃつく内側に馬を突っ込ませた。
何か考えがあってでは無い。
只の勘であった。

まだキャリアの浅い横平であるが、追い比べは密かに自信を持っている。
ズブい馬でもパワフルにガンガン追える筋力が彼の持ち味で、本人も自信としている所だ。
その自慢の腕力で馬を追い、ごちゃつく内側に突っ込んだ横平・・・
完全に塞がれていると観客席からは見えるが、彼の前には馬一頭分の隙間が見えていた。
ただ、狙ってここに突っ込んだのではない。
只の勘なのである。
本人も説明できない何かに気づき、ここに馬を導いたのだ。

先頭に立つマックスビューティ。
堂々と抜け出す磐石の競馬に誰もが思っただろう。
だがその後方から猛然と差を詰めるウィンドサッシュ。
しかも馬場の内側からだ。

田沢がその姿に気づいたのはあと少しで並ばれる瞬間。
当然彼だって目一杯追ってはいたが、脚色は全く違っていた。

だが・・・
田沢の顔に余裕があった。

そして、その余裕が物語るように、ウィンドサッシュの脚が並んだ所でパタリと止まりズルズルと下がってしまう。

焦る横平が必死で追うがここまでだった。
マックスビューティに次ぐ2着でゴールを駆け抜けたものの、最後の失速の理由を横平は理解できなかった。
側から見ても、ウィンドサッシュの勝利が決まったような抜け出しと末脚だった。
そう横平も信じていた。

その答えは田沢には理解出来ていた。

「脚を使いすぎだ」

端的に言うと、横平の経験不足の部分。
馬群を抜け出す閃き、コース取りの発想。
それは全て良かった。
だが、それ故に馬の負担を大きくしてしまったのは、彼が経験不足であったからだろう。

とは言え、ウィンドサッシュにとって、ここでの善戦は勝てなくても喜べる内容だったのだ。

牝馬三冠クラスの怪物マックスビューティとマトモにぶつかり合っての結果である。
奥原は悔しさの残る顔をしていた横平を励まし、労う。

「次はオークスか、NHKマイルにするかはオーナーと相談しましょう」
どちらにしても楽しみは広がる。


翌週は皐月賞。
ウィンドフォールが弥生賞2着からの参戦だ。
1番人気はスプリングステークスを勝ったマティリアルで、弥生賞を勝ったサクラスターオーがそれに続く。
ウィンドフォールはそこから少し離れた3番人気。

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