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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 19

レースは2周目の向こう正面。
ここからペースアップしていくのでシロノライデンの意識と澪の判断がカギになってくる。

馬群の外目でまだじっとして、あくまでまだ馬の気に任せるスタイルの澪。
前方各馬の手綱が徐々に動き始める。
シロノライデンよりも後方に位置していた一頭がグンとスピードを上げて外側からシロノライデンを交わしていこうとする。
ここでスイッチが入る。

同じく加速していくシロノライデン。
大外を回しながら中団に取り付く。
澪が思わず笑ってしまうぐらい手応えが良く駆け上がっていく。

こうなるともうシロノライデンのペースだ。
直線に入る頃には大外を回したのに先頭集団に追いつく。
そこから短い直線だが、こうなるとトップスピードに入ったシロノライデンの独壇場だ。
グングン加速して残り50mで先頭に躍り出る。
そしてそのままゴール。
遊ぶ気も出させる間も無い完勝だったのだ。

馬上の澪がふぅと息を吐く。
例え条件戦だろうと、綺麗に勝つと気持ちがいい。
オーナーにもいい報告ができると、シロノライデンの立て髪を撫でながら検量室に向かうのだった。


2頭の目処が立った所で樹里も満足して帰る事が出来た。
今回の北海道訪問は子供達の旅行や競馬観戦だけでなく、もう一つ目的があった。
一歳馬のセリである。

他所から買うつもりの無い樹里だったが、叔父から『勉強になるから行ってみなさい』と言う勧めと、幸子や真奈からも同じ事を言われたからだった。
それに良い牝馬を狙って買い、競走馬として走らせ、将来は繁殖に回すと言う血の入れ替えもありだと言う事だ。

かつて健三はセールで牡馬の幼駒を高額で購入して一躍時の人となったことがある。
しかしその購入した仔馬はデビュー前に競走馬としては致命的な故障をしてしまいそのまま引退という苦い経験がある。
健三も慎太郎もそれが競馬だと言っていたが当時の樹里は幼いながらもそれに納得いかなかった思いがあった。

「そうだなぁ…」
上場予定馬のリストを見て気になる馬を探す。
樹里の購入候補になったのは2頭。ブレイヴェストローマン産駒とリマンド産駒、どちらも牝馬だ。

どちらも良血かつ樹里にとって飼えない値段ではない。
今回頼まれて同行した真奈にとっては気が気では無い値段ではあった。

真奈にとってはセリは初めてではない。
健三もセリで馬を買う事もあり、それに幸子や真奈が同行する事は慣例化していた。
例の走らなかった高額馬のセリにも立ち会ったのだ。

樹里からは『もし走らなくても繁殖にできそうな馬を探したい』と前もって言われている。
逆に健三は牡馬を買うケースが多かった。
これは単にスタンスの違いと言うだけで、健三が涼風ファームや真奈達を蔑ろにしていたと言う事では無い。
むしろ健三には過剰に良くして貰っていた。

真奈が見る所・・・樹里の場合、牧場の存続に重きを置いてる気がする。
これは、健三や慎太郎の『強い馬を作る』とは少し違う気はする。
逆にそうだから、真奈達がプロとして強い馬を樹里に届けないといけない使命感みたいなものを感じるのだ。
だからこのセリも健三の時以上に重要だった。

「馬体的な雰囲気で言うとリマンド産駒、血統的背景を考えるとブレイヴェストローマン産駒の子かなと・・・」

真奈から2頭は、実力的には変わらないと見えた。
どちらもダービー、オークスというクラシックレースの勝ち馬を輩出した優秀な種牡馬の子である。
ブレイヴェストローマンは今年のオークスを制したトウカイローマンを出しており、血統的にも勢いがある。
対してリマンドは今年の春に死亡しており、今後産駒を所有できるチャンスは少なくなる。

「セリに行って金額が上がりすぎなければ2頭とも買うつもりでいます」
「わかりました」

たとえレースにいって走らなくても彼女たちには血をつないでいく使命がある。
樹里はそう考えている。

先に上場したブレイヴェストローマン産駒は難なく購入できた。

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