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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 18

だが、普段から調教にも傘下する澪は何となく癖を把握していたようで、悩みながらも仁藤調教師も任せる事にした経緯がある。

本馬場入場からゲートまでスムーズ。
いやむしろ、早く走らせろ的な雰囲気でグイグイ行く。
ゲート入りすら真っ先に入るぐらいだった。

そして、ゲートが開いた瞬間・・・
いち早く飛び出し猛ダッシュ。
無論、澪の言う事なんて聞かない。
聞かないと言うか、早く走りたくて仕方がないのと、生来のボス気質で先頭を走らないと気が済まないのだ。
調教でも併せ馬すると暴走するぐらい先頭に立ちたい気質なのだ。

スタートと共に飛び出してグイグイ加速。
後続を引き離していく。
仁藤調教師からは無理して抑えなくていいと指示はあるし、澪もとりあえずは馬の好きに任せる方向でいいと思っていた。
レースをしながら覚えていかせようと言う事だ。

ただ、ハイペースで飛ばしながらもコーナーリングは上手い。
手前も上手に変えている。
やっぱりこの辺りはシロノライデンより器用で賢い。

直線に入っても内ラチにピッタリ寄ってスイスイ進む。
決して暴走気味の逃げではないのは後続各馬が追い出しても差がつまらないのが物語っていた。
スターライトブルー自身もまったくバテることなくトップでゴール板を通過した。

樹里はやったとばかりにニコニコ顔。
一方の奈帆はこんなにも強いのかと思うくらいの驚いた表情。

驚く奈帆に対して、仁藤厩舎に浮かれてる様子は無い。
仁藤調教師がインタビューで答えた『積んでるエンジンが違うが、今回は相手に恵まれた』と言う言葉が全てであった。
ただやはり、あの気性故に距離延長に不安はある。
自走は同じ札幌のクローバー賞で距離延長を試すつもりでいるとの話だ。

そしてシロノライデン。
前回負けたものの元気一杯で、札幌への輸送も何も問題無いとの事だ。
馬体も更に絞れて雰囲気は良くなってきていた。
今回は3番人気。
古馬との初対戦でもある。

相変わらず大柄な馬体は目立つが、絞れてスッキリした感じに見える。
パドックでの歩き方も今までのノソノソと言う感じではなくしっかりとした足並みになっていた。

「大きい・・・」
「そうね、大きくなったわね」

奈帆がそう言う通り、体重減ながら大きく見える。
古馬と混ざりながらも雄大な馬体に見劣りどころか一歩抜けてる感があった。

仁藤調教師によると、今日のレースともう一戦使って神戸新聞杯と言うローテーションを考えてるようだ。
なのでここは勝っておきたいレースだった。

札幌競馬場の芝コースはヨーロッパの競馬場に近いものが使われており、ほかの競馬場の芝に比べ柔らかい。それ故にスタミナやパワーが要求されシロノライデンにとってはもってこいの舞台ともいえる。

一方で東京や京都などの主場とは違いフラットなコースで、直線も短いことから前残りのレースも多くみられる。シロノライデンにとってはそこが課題となる。

「頑張ってほしいなぁ」
「そうね」

樹里や奈帆が期待をする中でレースはスタートする。
スタートはスムーズでいつも通り後方につける。
ペースは平均的で、前走負けた時のようなスローペースでは無い。
それ故に仕掛け所が重要だった。

先頭に立つと遊ぶ癖のあるシロノライデンは、仕掛けが難しい。
ロングスパートできる脚はあっても、その性質があるから早く仕掛けていい訳でもない。
だからと言って仕掛けが遅いと直線の短いコースは届かない。
ある意味、馬にとっても澪にとっても試練のコースだった。

ただ、澪も前回の敗戦からの調教で手応えが変わってきたのを感じていた。
その変わったきっかけと言うのがスターライトブルーとの併せ馬だ。
単走だとサボるシロノライデンと、併走が嫌いなスターライトブルー。
並走なんてしないと勝手に走るスターライトブルーをシロノライデンで追っていると、かなり手応えがあったのだ。
元から並走だと併せる馬についていくだけのシロノライデンが若干必死に抜かそうとするようになった。
明らかに走りに対する意識が上がってる感があったのだ。

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