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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 178

ラモーヌはそんな中、残り200mで脚の鈍ってズルズルと下がり出したアレミロード・・・
そしてまだ粘るグレートコミュニケーターとサウスジェットを交わして先頭に立つ。

そこから脚を伸ばし突き放しの体勢。
後ろから追うトニービンやムトトもラモーヌに追いつかない。

このまま押し切る・・・
抜群の手ごたえで駆けるラモーヌを澪が追う。
ゴールまで100mを切る。
このまま勝利は間違いない。

そう思った瞬間だった。
大外を並ぶ間も無く抜き去ったのは、ダンシングブレーヴ。
それに続いてゴールを駆け抜けたラモーヌ。
呆然とする澪・・・
何が起こったのか全く理解出来なかったのだ。

何か理解出来なかった澪に対して、3着のトリプティクに乗っていたシャロンは一部始終を見ていた。
最後方から3番目で直線に入ったシャロンは、そこから追い出しを始める。
長い直線でトリプティクの脚なら充分に届く・・・
それを信じてのこの位置からの追い出しだった。
だが、残り400mの位置で外側から奴が来たのだ。
最後方に居た筈のダンシングブレーヴだ。

決して差し追い込み馬有利なハイペースではなかった。
それでも直線だけで前の他馬をごぼう抜きして見事に差し切ったのは、このダンシングブレーヴの圧倒的な力があったからに他ならない。

「アレはまさしく怪物ね」
「勝ったと思ったわ…」

負けても至って冷静なシャロン。
一方の澪は項垂れ、首をひねる。

「いつかあの馬の産駒に乗ってみたいわね」

敗戦もあっさりとした感があるシャロンは、そう言い微笑む。
彼女としてはベストレースをして負けた上に、後方からダンシングブレーヴの凄さを見られたからこそ悔いは無かったのだ。

「そうね・・・そうなるといいよね」

まだ敗戦のショックがある澪がクールダウンを終えたダンシングブレーヴを見ながら答える。
まだもう1レース走れそうなぐらい激闘の跡の無いダンシングブレーヴの凄さは、それだけで戦慄を覚える。
シンボリルドルフやミスターシービーと言うスターホースを見てきた澪だが、世界最高峰の名馬と言うもののレベルは遥かな高みであったのだ。


そんなショックも冷めやらぬ中、ドバイワールドカップである。
本命と言えるのは、昨年のアメリカクラシックを戦ってきた2頭・・・
ファーディナンドとスノーチーフだ。
そこにスカイウォーカーとプレシジョニストと言う古豪が続く。
珍しい所では、ニュージーランド最強騸馬とも言われるボーンクラッシャーやアメリカ生まれイギリス育ちのオーストラリア所属馬アトラタク。
アイルランドのアウザール等も参戦してきていた。

そこに参戦するフルダブルガーベラ。
前走のオールウェザーでの走りも悪くなく、ここまでの調整も順調にきた。
手続き上は濱松厩舎に転厩となったが、このドバイの一戦までは仁藤厩舎のスタッフが主となって仕上げている。
いつものようにカリカリしているガーベラをパドックで寛子が見守る。

他の馬に攻撃的と言うか、近づいてこようとすれば威嚇するのも変わらない。
ここまでの調整でラモーヌと共に行動していたが、両方共に何とも言い難い緊張感がある関係のままだったようだ。

「喧嘩する訳でも無いけど、互いが意識してるみたいだね」

両厩舎の人間が口を揃えて言うのがそんな言葉だ。
まるで馬同士がライバルと意識しているかのようなのだ。

「じゃあ、ラモーヌの仇を取らないとね」

跨った澪がそう言うと、いつも通りうるさく首を振るガーベラ。
私がそんな事の為に走る訳ないでしょ!とでも言いたげな女王様ぶりだ。
そんないつも通りのガーベラに安心してしまうのを澪は感じていた。

前回戦ったスカイウォーカーとプレシジョニストはオールウェザーでなければどうなっていたか分からなかった。
やはりアメリカ競馬のレベルの高さはまだ及ばないものを感じるぐらいだった。
その2頭より充実していると言うファーディナンドとスノーチーフ。
明らかに前回より敵は強いと言う事だ。

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