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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 176

殆ど平坦な中京競馬場。
最終コーナーから直線に入っても脚の衰えないウィンドフォールは後続に2馬身をつけて先頭を走る。
ガムシャラに追う横平に応えるように、更に加速して突き放していく。
追ってくる馬も突き放し、5馬身の差をつけてゴール。
全く危なげない勝利だった。

勝った横平は呆然。
いつの間にか勝っていたと言う感じだった。

「いよう!G1騎手さん!」

上機嫌で迎える宮沢。
まだ放心している横平。
嬉しいと言う実感すらまだ湧かない様子だった。
ウィンドフォールの方は一仕事終わったと言った感じで、鞍上よりも手慣れた感じであった。

「何か・・・乗ってるだけで終わりました」
「そんなものさ・・・それでも勝ったんだから誇ればいい!」

横平を労う宮沢。
宮沢だけでなく、色々な関係者が横平を祝福し、ようやく勝利の実感が湧いてきた横平が頬を綻ばせたのだ。
彼もこの業界でのサラブレッドだ。
故に多くの関係者が彼に期待していたからこそ、この勝利を我が事のように喜んでいるのだ。

この勝利が彼により自信をつけさせてくれるはずだ、宮沢はそう信じてやまない。
新たなGTジョッキーの誕生を関係者もファンもおおいに祝福したのだった。


そこから遡ること数時間前ー
リュウノラモーヌとフルダブルガーベラはドバイの大舞台に挑んだ。
ラモーヌは芝2400のシーマクラシック、ガーベラはメインイベントのドバイワールドカップだ。

ラモーヌが予定していたドバイターフではなく、シーマクラシックに登録したのは理由があった。
それは参戦する馬達だ。

まず、世界を股にかける女傑トリプティクが参戦。
前回のジャパンカップで先着された雪辱を期すには良い舞台と言うのがあった。
勿論、これは理由の一つではあったが、もっと大きな理由はヨーロッパから急遽参戦が決まったスターホースの存在が大きい。

その名はダンシングブレーヴ・・・
サウジに参戦してきたベーリングやシャーラスタニすら霞む程のスターホースが参戦したのだ。

ヨーロッパ競馬史の長い歴史の中でも屈指の名馬と既に語られる生ける伝説。
そのヨーロッパの至宝が引退レースとしてここを選んできたのだ。

これはヨーロッパで種付け生活に入るダンシングブレーヴをアラブの大資産家馬主達にお披露目すると言う意味合いが大きい。
ベーリングやシャーラスタニも同じような理由で引退レースを中東にしたが、ダンシングブレーヴも同じだと言う事だろう。

アメリカで生まれ、サウジの王族に買われたリファール産駒の鹿毛の牡馬はイギリスに渡り「勇敢な踊り子」という名をつけられ競走馬としてデビューし、ここまで10戦8勝2着1回という素晴らしい成績を挙げた。
唯一の着外は直近のブリーダーズカップターフの4着だが、それだけで評価が落ちるような馬ではない。
その前の凱旋門賞が規格外のとんでもない勝ち方で世界のホースマンたちを驚かせたからだ。

そんなヨーロッパ競馬の至宝に挑めるとあって、奥原はシーマクラシックを選び樹里も了承した。
無論、勝つのは至難であるのは分かっての上だ。
凱旋門賞では同じモガミ産駒のシリウスシンボリが挑戦したものの惨敗している。

「芝のタイプはむしろ日本に似ているドバイなら可能性はゼロでないと思ってますよ」

随分海外遠征に慣れてきた奥原がそんな風に自信を見せる。
ラモーヌの仕上げも良く、相手に見劣りしないと自負していた。

無論、これだけ自負できるのはサウジカップから現地で調教してきた愛美以下スタッフ達の働きによるものが多い。
ガーベラをこのレースまで担当する仁藤厩舎のスタッフと共に2頭をきっちりこのレースに仕上げてきている。
両厩舎共に海外にスタッフ派遣は負担ではあったが、ヨーロッパやアメリカの最新技術を導入する中東での活動は得るものも大きかった。
そんな中でその技術を吸収した奥原や仁藤に薦められて、涼風ファームではポリトラックのコースを作る予定であった。

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