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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 173

どう扱えばいいのか寛子筆頭に厩舎スタッフが困惑している中当の舘悠本人は
「この世界に入ったら親子も何も関係ないので」
と飄々としていて、あまり新人らしくなくてまた周囲は困惑。
それが逆に「大物感を感じる」という評判も出てきているが。

澪も会って会話を交わしている。
話していて感じるのは勉強熱心な好青年であるのと、ジョッキーとしての自信を存分に持っているようなオーラ。
こちらも慢心していては一気に天下を取られそうな雰囲気すら感じた。

ただ2人が一番感じたのは・・・

「本当にいい子なのよねぇ・・・」

寛子の顔がお母さんになっている。
もう可愛くて仕方ないと言う顔だ。
勿論、天才肌なのに努力家、しかも自信に満ちているとか言う部分がそう言うのが可愛いと言う訳では無い。
むしろそれは可愛げが無いと言われてしまう。

だが、彼の育ちの良さと屈託ない笑顔が、その負の部分を全部決してしまうのだ。
その笑顔だけでなく、どんな人の懐に入っていける人懐っこさ。
少々厚かましいぐらいグイグイ来る所もあるが、むしろそれが可愛げに見えてしまう。
澪も初対面で好印象しかなかった。

そんな3月。
澪は海外遠征がありながらも、今年も順当なスタート。
リーディングはここまでトップを走っている。
重賞勝利こそ無いが、ここから先に有力馬も沢山出て来るから焦ってはいない。

そんな中でリトルウイングが弥生賞に出走する。
皐月賞への資金石とも言えるレースで、ホクトヘリオスと共に有力馬の一角を占めていた。

2歳王者堂々の始動戦。
距離がマイルから2000に伸びるのは全く問題ないというのが澪と陣営の共通の見方。
馬体も仕上がっていい感じだ。

「やっぱりいい馬だな」
「ここは無事に回ってきてくれたら、次につながるわ」
樹里が見据えているのは次の皐月賞。

「リトルウィングもいい馬ですね…あの子も負けないように頑張ってくれるかしら」
「力は同等のものがあるんじゃないですかね?」

今回はエリックと幸子が同伴…幸子が見守る「あの子」とはサクラスターオーのことである。

人気は高く無い。
デビュー戦で騎乗した児玉が主戦から降り、吾妻に変わったのもある。
だが、馬体の成長も著しく、古馬かと言う程の風格があった。

「どちらも負けて欲しく無いわ」

祈るような表情の幸子。
産後一月ぐらいだが、次の日から平然としていただけに今の体調はすこぶる良い。
子供達は真奈に任せてここに来ているが、その真奈も3回目の出産は順調で、体調的もすぐに回復していたようだ。


樹里達が見守る中、パドックでリトルウイングに跨る澪。
寛子が調教師となり移籍した厩務員もいる事もあって、調教助手の松山が遠征に帯同してきている。

「いい仕上がりですね、本当に」
「そりゃあ成長期だしな」

丈夫なリトルウイングは鍛え甲斐があるらしく、松山のお気に入りだとか。
新馬の頃は好奇心のままに物見する性格も、鍛えられていくにつれ無くなり、ドッシリと落ち着いている。
ただ落ち着き過ぎてズブいのが強調されがちと言う欠点もあるが、一度反応さえしてくれれば鋭い脚も持っている。

澪にとっては手のかからないリトルウイングは気楽に相手できる、レースプランも立てやすい馬かもしれない。

関西からの遠征はリトルウイングただ1頭。
皐月賞と同じコースを走るのと輸送慣れするのを目的にしての出走だ。

12頭がそろったスタートを切る。
ビュウーコウがポンと出てハナを切り、マイネルダビテがピタリとマークする。
リトルウイングはそれを見ながら3番手グループの集団。
ホクトヘリオスとサクラスターオーは中団からの追走となる。

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