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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 172

思った以上にペースは遅い。
深く柔らかい感触故なのか、先程の芝のレースより遅いのだ。
これはマズいなと澪がガーベラを少し動かす。
前への距離を詰めて行くが、同時にスカイウォーカーが動く。
やはり心配は同じと言う事なのだろう。

逆にベーリングはこの時点で動かない。
淡々と走っているのに不気味さを感じる。
何せ、ガーベラの後ろを走るシャーラスタニと共にヨーロッパでも最強級の馬なのだ。
同世代にダンシングブレーヴと言う伝説的名馬がいたから過小評価されがちだが、2頭共に相当なレベルであるのは間違い無い。

とは言え、今のガーベラは動くと言う選択肢しかない。
4コーナーに入り、前のサウジ馬2頭を交わしてパワーホースに迫ったのだ。

そして直線。
パワーホースに馬体を合わせる。
すぐ後ろにはスカイウォーカー。
平坦だが長い直線。
鞭を入れるタイミングを計る澪に対してスカイウォーカーの方が先に仕掛けた。
だが、スカイウォーカーも追う割には伸びない。
パワーホースもまだ粘り、ガーベラはジリジリ差を詰める。

思った以上に踏ん張り、頑張りを見せるパワーホース。
ガーベラはなんとかそれに並びかけて突き抜けたいところだが、並んでからもなかなか差が開かない。
むしろパワーホースが再び伸びるのではという手ごたえ。

ガーベラが苦戦するのと同じようにスカイウォーカーとプレシジョニストも苦しい手ごたえ。
その後ろからはベーリングとシャーラスタニが伸び脚鋭く迫ってきていた。

必要以上にパワーを使っても進んでる感が無い。
まるで溺れているみたいと追いながら澪は思う。
馬場の質がガーベラに合わない・・・
だが、それでも地力でパワーホースに並びかけて追い越す。

パワーホースもシャロンが一生懸命追ってはいるが限界。
スカイウォーカーとプレシジョニストのアメリカ馬2頭も伸びを欠きもがいてる。
それに対して鋭い伸びのベーリングとシャーラスタニ。
残り200mの攻防で、先頭に立ったガーベラは必死に粘ろうとする。

必死で追う澪。
だが、ベーリングとシャーラスタニの脚は止まらない。
残り100mでついに捉えられ、交わされてしまう。

そして最後は英仏のダービー馬の一騎打ち。
僅かにベーリングが先着してゴール。
ガーベラは1馬身半遅れた3着であった。

ゴーグルを取り俯く澪。
ダートと全く違う馬場にガーベラも戸惑った事だろう。
いつもの感じではなかった。
だが、この結果はむしろ、健闘と言っていいし、次に繋がるとは思う。
何よりオールウェザーと言う未知の馬場を体験できた事はプラスだった。

ラモーヌとガーベラはこのままドバイに移動し、引き続き現地で調整される。
澪はいったん帰国するが、厩舎スタッフが数名残って2頭をケアするという。


3月。
競馬界ではこの時期が人事的に大きく動く。

競馬界初めての女性調教師として注目される寛子とともに、注目を集めるひとりの新人騎手がいた。

舘悠。
現役時代、魔術師の異名を持つ関西のトップジョッキーである舘国広の三男である彼は、競馬学校時代から抜群の成績を修めてデビューを迎えていた。
しかもその鳴り物入りでデビューする『良血』が濱松厩舎所属となった。
それに驚いているのは世間ではなく、実は寛子自身であった。

「それで、舘先生は何と?」
「好きにしたらええって・・・一番困るお言葉を貰ったわ」

そう聞く澪に対して頭を抱える寛子。
無頓着な性格と言われる舘調教師だが、息子のデビューにも無頓着と言うか余り興味無さげな感じだったと寛子は話して思った。
その口ぶりは『俺の息子なんだからそこそこ出来るだろ?』的な感じで、自らの厩舎でみっちり教える気も余り無いようだった。

関東の期待の若手の横平は、奥原を始めとする競馬界の親戚一同がバックアップしつつ育てている。
むしろこちらが普通なのだが、舘国広は全くそんな素振りは無く、新人の若い調教師に自分の息子を任せて無頓着でいる。
故に逆に寛子の方が気を揉んでいるぐらいだ。

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