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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 171

どの馬にとっても未体験であり初体験である馬場だから実績など関係ない…そう前向きにも捉えられる。

ガーベラはこの遠征後に転厩となる。
転厩先も勝手知ったる寛子の元に行くわけで今後も主戦を務めるのは確実だろうが、今回は大事な一戦だ。
まあガーベラ自身は至っていつも通りだが。

そのガーベラとラモーヌだが、今回の遠征で久しぶりの再会となった。
牧場では共に育成された2頭だったが、とりわけ仲が良い訳では無い。
と、言うか微妙な距離感があった。

お互いがお互いを意識していると言うか、意識しているから距離を置いていると言うか・・・
両陣営共に少し緊張感が出るような距離感だったのだ。

喧嘩にならないだけ良かったねと両陣営共に言い合っていたものの、隣同士の馬房に澪が来た時に『アンタどっちの味方すんのよ?』的な視線を2頭に送られて威圧感に半笑いしながら後退りした覚えがある。
次回も恐らくドバイで2頭同じく遠征になるが、そんな緊張感が怖いなと思う澪だった。

そのガーベラと本馬場に出て、シャロンの乗るパワーホースと共にバックストレッチ奥にあるポケットのスタート位置に向かう。
このパワーホースも香港のG1馬だ。

先ほどのフォーエヴァーゴールドもそうだが、香港は基本馬産は存在せず他地区から移籍してきた馬だったり馬主が他国のセリで購入した馬がほとんどである。
そして香港の強豪馬は騙馬――去勢された牡馬が多い。

「早々と去勢されちゃうとかわいそうな気もするね」
「この子は気性も激しかったっていうし、去勢しないとロクに勝てなかった可能性もあるからね」

そんな話を聞きながら澪は牝馬の気性が荒いのはどうしたものかしらとガーベラに目を落としながら思うのだ。


そして、サウジカップのスタート。
ガーベラのスタートは悪く無い。
ハナを切ったのは、シャロンのパワーホース。
彼女は未知の馬場だからこそ先手勝負と考えたようだ。
その後ろに地元サウジアラビアの馬が2頭。
これも未知数な相手だが、世界有数の資産家であるサウジ王族の馬だから弱い訳では無いだろう。
その後ろにガーベラ。
ガーベラの側にはB Cクラシック勝者のスカイウォーカーと仏ダービー馬のベーリングが追走している。
この2頭は言うなればこのレースの本命同士だ。

長いポケットを走りながら感触を確かめる澪。
深く柔らかいオールウェザーにガーベラは気にせず走っているが、澪の体感では本来のダートより切れ味勝負は出来ないように思えた。
逆に隣のベーリングが楽に走っているようにも見える所から、芝の深いヨーロッパの馬に向くのかもしれない。

ガーベラのすぐ後ろにプレシジョニストがいて、シャーラスタニは後方。それでも前と一番後ろとの差は少なくほぼ団子状態。
ガーベラは気分良く行けているから問題はない。
オールウェザーの馬場も難なく走れているから、あとはどこで動くかだ。

3コーナーに入る。
パワーホースとサウジ勢2頭がびっしり並んで後ろに2馬身ほどのリード。

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