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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 167

2番手追走のハナキオーは1200のレースで押し切るような快速馬で、その気になればカウンテスアップからハナを奪うことも可能な馬だ。
ハナキオー鞍上の堀田もガーベラには苦杯をなめさせられていることもあって今回は違うレースを考えているのだろう、と的屋は踏んでいた。

一方のガーベラは動くに動けない展開。
こういう状態だとガーベラ自身にフラストレーションがたまっていく。
しかしこれは決して悪い展開ではない。

バックストレッチもカウンテスアップが淡々と逃げる。
徐々にペースを落としているのが澪でも感じ取れて、ハナキオーが少し先頭に距離を詰めていく。
それと同時に後続も動く。
カウンテスアップとの距離を詰めておかないと、このまま逃げ粘られてしまうからだ。

澪も同じく距離を詰めていくが、ガーベラの後ろにテツノカチドキがピッタリと付いてくる。
完全にガーベラをマークしての行動だし、恐らく仕掛け所も読んでいるのだろう。
普通に考えればプレッシャーだが、今日の澪は不思議な程落ち着いて乗れていた。

それはガーベラの手応えだ。
いつも通りフラストレーションを溜めながらも、グッとそれを抑え込んでいる。
その抑え込んでいる感がいつも以上に感じる
上に乗る澪に早く爆発させろと言っている気さえしていたのだ。

そんなジッと我慢するガーベラ。
カウンテスアップはペースを保ちながら3コーナーへ。
ハナキオーは並びかけようとする。
それに後続も距離を詰めていく。
ガーベラは5番手で4コーナーに入っていった。

直線の攻防。
カウンテスアップはまだまだ余裕。
並びかけるハナキオーの鞍上の手綱のほうがいっぱいに動いている。
ガーベラはその外から一気に先頭まで進出してくるが、その外にはテツノカチドキ。
ここから激しい追い比べの始まりだ。

逃げるカウンテスアップの脚に衰えは無い。
地方競馬場の中でも長い直線を誇る大井競馬場であれ、不安は無かった。
ダートであれば、3000mでもこなせるスタミナと、マイルでも勝負できるスピードを兼ね備えていると的屋も自負していたし、地元であれば尚更負ける訳にもいかない。

だが、敵も強い。
大井の帝王がチラリと振り返って見る程、敵の強さが不安なのだ。
そして、彼の視線にはその敵が捉えられていた。

その敵・・・
ガーベラが猛然と駆けていく。
直線に入り、鞭を入れた瞬間、待ってましたとばかりに己の力を解放する。
爆発的な末脚でアイランドハンターを交わし、苦しみながら粘るハナキオーに迫る。
本来は切れ味勝負する馬では無いが、とは言え水準を大きく越える瞬発力が無い訳ではない。
何よりの武器は、競り合うと負けん気の強さを発揮する所だ。
アイランドハンターとハナキオーと馬体を合わせ競り落とした事で更なる闘志を燃やし、残り200mでカウンテスアップを捉える。

そして並ぶ間もなく突き放しーーーと言うわけには簡単には行かない。
カウンテスアップもまだ最後の余力で粘り込もうとする。
帝王がそう簡単に沈む真似は絶対にない。

さらにガーベラの外だ。
ガーベラを執拗にマークし続けてきたテツノカチドキだ。
地方競馬の「鉄人」とも呼ばれる鞍上・佐々井が鞭を振るって追い込んでくる。

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