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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 166

いつにも増して荒ぶっているように見えるが、気持ちの乗っているガーベラはこうなる。
気持ちが乗りすぎてヒートアップしてしまい消耗する事もあるから、調子が良い方が気をつけて扱わなければならないタイプだ。
ただ、やはり調子が乗らないと動きが悪くなるので、そう言う意味でも女王様気質なのだ。

今回は寛子ではなく、高島優菜と言う2年目の厩務員が担当している。
年明けから寛子が調教師としての準備に入るから受け持ってる訳だ。
とは言え、彼女も寛子の厩舎に移籍が決まっている為に臨時なので、寛子の担当していた馬は現在厩務員達が持ち回りで世話をしていたりする。

「優菜はガーベラ様に気に入られてるよね」
「ええ、お陰でガブリとやられましたよー」

パドックで周回しながら澪と優菜が会話。
歳が近いからお互い話し易さがある。
因みにガーベラが噛み付くのは気に入った相手だけで、気に食わない相手だとソッポを向くのだ。

寛子が冬は身体の動きが良いと言っていただけに、歩き方も軽快さがあった。
馬体も良い具合に絞れて、調教の動きも抜群だった。

一年の最後を締め括るには絶好の出来。
そしてこの荒ぶる闘志を前面に出してレースに挑む。
これだけ荒ぶっていても跨った鞍上を振り落とすようなことはしない。

馬場入りの脚取りも軽快でいい。
数メートル進んだだけで今日は勝てるところまでいけると澪は確信した。

そんな東京大賞典。
レースは抜群のスタートからカウンテスアップが先頭。
ハナキオーがそれに続く。

ガーベラはアイランドハンターと共に5番手程の位置。
その後ろにはテツノカチドキが位置していた。

カウンテスアップの逃げは予想されていた事だ。
地方競馬は中央より先手を取る方が勝率は高い。
特に先行力が抜群なカウンテスアップは逃げても展開を作れる強みがあった。

正面スタンド前を通り1コーナーに向かう。
地方競馬場でも最大級の広さを持つ大井競馬場は、コースに窮屈感は無い。
川崎や浦和で走った時よりゆったりできる。
とは言え、気を抜くと前残りの多いのも、この競馬場の特徴だ。
アメリカのダートを参考にしたと言う大井のダートは、中央よりもタフでパワーが求められてしまう。

ただ、ガーベラ自体はそれは問題ではない。
タフさもパワーも充分に持ち合わせた馬なのだ。

中央でも地元でもガーベラの強さは思い知ってきた地方勢。
ここだけは何としてもという気迫を各馬からヒシヒシと感じられる。

カウンテスアップの逃げにハナキオーは無理に競りには行かない。
競りに行くことで後半失速してしまうのを考えたのと、ペースが早くなることでガーベラに打ってつけの展開になるのを避けているのだ。

そしてそのガーベラにはテツノカチドキがしっかりマークしている。

やはりと言うか、タフなレースになりそうだ。
地方騎手の意地として、中央の馬には勝たせたくない思いも強いだろう。

1コーナーから2コーナーを回っていくにつれ、カウンテスアップのペースは落ち着く。
大井を知り尽くしている的屋の手綱だ。
油断できないが、まだ動く訳にはいかない。

バックストレッチに入ったところで、ガーベラは6番手。
馬群の外側でロスはあるものの、内側に入れるのはリスクが多い。
川崎のような荒っぽい事は大井ではされないと思うが、周囲は全員敵と思って対処しないといけない。
多少のロスは受け入れるしかない。

的屋とすれば澪の戦術はある程度読めていた。
中央の騎手にありがちと言うか、無理な乗り方はしないだろうと言う読みがあった。
故に今回は逃げて自分でレースを作っていくつもりだった。
カウンテスアップは地方最強馬と言われながらも、今年は期待に応えられていない。
秋こそ巻き返しと意気込んで臨んだが、中央の女傑に苦杯を舐める結果に・・・
帝王として許される訳が無いと気を入れてレースに臨んでいた。

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