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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 165

2頭は馬場の良い所を走って来ている。
中でもシロノライデンの伸びが良い。

田沢としては、これは思い描いていた展開だった。
バックストレッチからレジェンドテイオーがペースを落としたのを見て取って、自分のペースを上げる事でプレッシャーをかけて前を動かす・・・
前の馬はそれに撹乱されて、ダイナガリバーを除いてペースを乱され馬群に沈んでいる。
後は芝の良い所を走って前を捉えるだけだ。

同じく駆け上がってくるギャロップダイナ。
こちらはマイルが適距離と言われるが、距離の融通が利かない訳ではない。
ただ、癖の悪い馬でスローペースに焦れてしまっていたが、シロノライデンが追い上げてきた事で逆に馬が折り合って、自慢の爆発力に繋がったのだ。
海外遠征でもこのスローペースに良い所を殺されてしまっていたギャロップダイナだったが、今回はシロノライデンの存在のお陰で本来の良さを取り戻したのだ。

そして残りは200m。
先頭はダイナガリバー。
半馬身差まで迫るラモーヌ。
シロノライデンとギャロップダイナは2馬身程の差。

勢いはシロノライデン、ギャロップダイナの順に、外の馬の方が伸びがいい。
ダイナガリバーとの差はあっと言う間に近づいてくる。

(あとちょっとだけ頑張って…!)

澪は自らの力も振り絞りながらラモーヌを鼓舞させる。
しかしあと一歩、なかなか前が遠い。
その間にシロノライデンとギャロップダイナは並んできていた。

ゴール板を通過。
ダイナガリバーにシロノライデンが並びかけ、ギャロップダイナは3着、ラモーヌは4着。

写真判定時間が長い・・・

クールダウンを終えた澪がラモーヌをライデンに寄せる。

「どうですかね?」
「どやろな?」

田沢にも差し切った手応えは無かったようだ。
それはダイナガリバーの増田も同じくらしく、ミホシンザンの柴原と話ながら首を傾げていた。

中々決まらない事にスタンドがざわめく中、澪は田沢と共に戻る。
検量所で降り、愛美に声をかける。

「すいません、ご期待に添えなくて」
「今日は少し過酷だったわねぇ・・・むしろラモーヌを誉めてあげたいわ」

愛美からすれば、あのごちゃつく馬群の中からよくぞ抜け出してきたと言う思いの方が強い。
逆に馬群を避けて外回りしても、結果が良くなるとは思えなかった。
むしろ、悪いコンディションと展開の中で健闘したと言う感覚が強かった。

「負けても強いと改めて思えたね」

ジャパンカップに続く連敗だったが、奥原も落ち込みは無い。
適距離の2000m前後のレースならこのメンバーでも勝てると思えるような内容だったからだ。

そんな中で、ようやく判定結果が出る。

1着はダイナガリバー。
2着のシロノライデンの差はハナであった。
それもこれだけ時間がかかったと言う事は、数センチの差だったのだろう。

「いやぁ・・・やられましたなぁ」

仁藤も苦笑いするしかない。
これまでシロノライデンは追い込んで届かずと言うレースは幾度もあったが、その中でも最も惜しい敗戦だった。
樹里も両陣営に労いの言葉をかけるが、若干悔しさの残る年末となったのだ。


有馬記念で惜敗したからこそ、笑って年越しを迎えたい。
そんな思いを背負っての東京大賞典である。
帝王賞と並ぶ地方最大のビッグレース。
大井競馬場で行われる名実共にダートチャンピオン決定戦だ。
こちらも女帝ガーベラが大本命であるが、迎え撃つ地元のカウンテスアップ陣営の意気込みも強い。
同じく大井の古豪、テツノカチドキと共に迎え撃つ準備は万端だった。

澪にとってはこの年末まで競馬に乗っているのは初めてのことだった。
有馬記念が終われば短いながらも完全なオフ期間。
昨年までなら実家に帰ってテレビで見るような暮れの大一番に自分が本命馬に乗って挑む。
嬉しいことだ。

「ガーベラ様、今日はご機嫌でございます」
「いつもに比べたらね」

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