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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 161

一方、奥原にとっては初めての海外挑戦。
同行するスタッフはあえて愛美達若手を連れて来ているのは、柔軟性のある若手にノウハウを吸収させる為だった。
奥原自身も知識や経験を積む意味もあるし、彼にとって本命はラモーヌの海外遠征だ。
その第一歩が香港と言う事だ。

「しかし、香港のリーディングジョッキーに乗って貰えるとは有り難いね」
「そうですね・・・相原騎手が来れないとあって、どうしようかと思いましたものね」

奥原と愛美がそんな話をする。
樹里との関係でシャロンが騎乗してくれただけでなく、ウィンドフォールの受け入れから調整までをブラウンウッド厩舎が協力してくれている。
その上、厩舎の有力馬を香港マイルから別のレースに振り替えてくれてるのだから、万全の応援体制と言えた。

「アメリカのターフチャンピオンを負かす姿って、痛快じゃないですか?」

しかも調教師のセシリーが日本語がある程度喋れる事も奥原達には心強かった。

「全くその通りで・・・だがやはり、マニラは凄い馬ですね・・・」

アメリカのターフチャンピオンの威圧感は奥原も気圧されていた。

超ハイレベルと言われたブリーダーズカップ・ターフの覇者。
今回は不参戦だがヨーロッパの至宝と呼ばれるダンシングブレーヴを破っての勝利は世界中に報じられた。

「まあ今回は胸を借りるつもりで挑もう」
そう奥原は言ってウィンドフォールを送り出す。
ウィンドフォールも状態面では申し分のない出来だったからだ。

そんなウィンドフォールとシャロン。
ゲートが開いた瞬間、猛然と飛び出してハナを奪う。

ヨーロッパ的なレース展開になりやすい香港では前半から飛ばしていく展開は珍しい方だ。
ただ参加しているアメリカ馬からすれば、珍しくは無い。
とは言え、ウィンドフォールの逃げは誰もが意外だった事は確かだ。

ハナを奪ったウィンドフォールに香港の馬は競りかけて行かない。
元々スローの展開を得意とする馬が多いのもあるが、恐らく多くの騎手はスターライトブルーの暴走特急のような逃げのイメージがあるのかもしれない。
あんな馬について行けば潰れるとイメージ先行で控えてくれたのもシャロンなりの読みだった。

そんな展開で2番手はダハール。
こちらは高速競馬は望むところのアメリカ馬だ。
とは言え、無理には競りかけていかない。
マニラやシャルードは中団からの競馬を選択していた。

他が競りかけては行かないので、ウィンドフォールにもストレスのかからない楽な競馬をさせることができた。
この展開なら能力以上のモノが発揮できる。
シャロンはそう目論みながら単騎で先頭を突き進む。

日本なら勝負どころと言われる3コーナーから4コーナーにかけても後続はあまり動きがみられず、淡々とレースは進み最後の直線へ差し掛かる。
ウィンドフォールはいい感じの逃げができている。
問題はこの長い直線だ。

直線に入り後続馬が差を詰めてくる。
だが、その動きは緩慢としているように見えた。

いや、緩慢としてるのでは無い。
香港所属馬の騎手達が鞭を叩きながら力一杯追っているから、ウィンドフォールが止まらないのだ。
その差は2馬身程・・・
だが、その差が詰まらない。

その中でダハールがジリジリと2番手に上がってくる。
香港所属馬より良い脚を使って2番手に上がってきたダハールが少しずつ距離を詰めて残り300m・・・
だが、ウィンドフォールの脚は鈍らない。

これにはシャロンなりの乗り方があった。
スタートダッシュでハナを奪って逃げたウィンドフォールだったが、逃げながら少しずつペースを落としていたのだ。
恐らく誰も競りかけてこない事を読んでの戦術で、これで消耗を抑えたからこそのこの粘りだったのだ。
彼女が香港のリーディングジョッキーだと言うのは伊達でないのだ。

しかし、そのダハールの後ろから迫ってくる馬がいる。
白い馬体、シャルードだ。
明らかにダハールより良い脚を使って上がってきていた。

そして、その後ろには・・・
本命、マニラが猛然と駆け上がってくる。

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