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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 159

人気はサンキンハヤテ、ヤマニンアーデン、ゴールドシチー。
そして樹里の所有馬リトルウィングも人気の一角を占めていた。

前週の阪神JFではウィンドサッシュでは5着と健闘。
奥原もまだまだこれからの馬と敗戦に関しては気にはしていないようだった。
樹里も勿論、素質馬であるので期待はしていたが、全て勝てないものと思っているので関係者を労うだけであった。

そして今回、勿論勝ち負けを争える事で期待はしている。
それは仁藤厩舎でも同じだ。
ただ馬がまだ若いので、無理はさせない方針だ。
とは言え、ここもG1。
当然、勝つ為の戦略を立てていく。

パドックでも良血馬らしく見栄えがするリトルウィング。
ウィンドサッシュもそうだが、涼風ファームの生産馬と違って垢抜けた感じがあった。
ノーザンテーストが無骨な感じなのに、リトルウィングは余りそんな無骨には見えない。
ただ若干ズブい所があって、そう言う所が良血のおぼっちゃま感があった。

そのリトルウィング以上にパドックで見栄えがよくファンや関係者の注目を浴びていたのが3番人気のゴールドシチー。
札幌2歳ステークスを勝って以来の出走となるヴァイスリーガル産駒のこの馬はその名の通り金色に輝くような尾花栗毛の馬体とタテガミを父から受け継いだ。

前評判で美形対良血と銘打たれた一戦。
目立つ存在のゴールドシチーとリトルウィングがクローズアップされていたが、他の馬も決して弱くはない。
クラシック有力馬はホープフルステークスに回る事が多いが、今回はG1に相応しいメンバーは集まったと言える。

パドックで号令がかかり、澪がリトルウィングに跨る。
ズブいタイプだけに騎手が跨っても余り変化は無い。
シロノライデンも落ち着いていて余り変化の無いタイプだが、こちらは本当にズブいと言うかおっとりしているのがおぼっちゃまぽさがあった。

「もう少し身体が出来てきたら、ハードに調教していくって松山さんが言ってたわ」
「いやこわいですねそれ」

寛子とそんな話をしながら澪も苦笑する。
松山が『本気で鍛えたい』と言ってただけに、仕上がったらどんな馬になるのかと言う期待感はある。
それは寛子も同じだろう。

その寛子は、調教師試験に合格して来年度から厩舎開設できるようになっていた。
その準備もあるから、こうやって馬を引くのもあと少しで終わりであった。

「寛子さんが開業する前の手土産にしますよ」
「3月からはうちのきゅう舎所属になってもいいんだよ?」
「いや、さすがにそれは、ねぇ」

寛子が厩舎を開業する暁には今の仁藤きゅう舎のスタッフが数人寛子についていくことも決まっている。


「うちのは血統もそんな良うないし、馬体も小さくて見栄えもせんけど根性は誰よりもありますからな」

そう言って愛馬を送り出すのは栗東の若手調教師・橋内。
1番人気を背負うサンキンハヤテが彼の管理馬だ。

そのサンキンハヤテの鞍上の東出は、20代後半の若手で中々勝ちに恵まれていなかった。
そんな中でサンキンハヤテは初めて回ってきた有力馬だったのだ。
そしてゴールドシチーの鞍上の本多も同じく20代の若手であり、ここまでの素質馬を任されたのは初めてだった。
それだけに両人共に気合が入っているし、自分達より若い澪がトップに上がっていくのに感心しつつも嫉妬心も感じていたのだ。

橋内は騎乗前の東出に声をかけていた。

「全て任せた・・・思い切って行くんや」
「はいっ、先生!」

そう言われて燃えない東出ではない。
信頼して任された喜びと重圧で武者震いしてしまう。
そんな中、騎乗した東出の前を悠然と歩くリトルウィングと澪。
自分より小柄で若い少女が馬に乗ると、何故かどっしりとした威圧感を感じてしまっていた。

これがトップジョッキーの威圧感かっ・・・

自分より若くてもトップクラスで争っていた彼女は、彼より遥か先に居るように思えた。
飲まれたら負けやと自分に言い聞かせ、東出はグッと奥歯を噛み締めたのだ。

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