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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 158

直線での攻防が激化する。
地方の雄のたたき合いから地方と中央の意地がぶつかり合った大激戦へ。

カウンテスアップは苦しくなるが、それでも的屋の鞭に応え踏ん張る。
間のグレートローマンもしぶとい。
ライフタテヤマ、フルダブルガーベラは勢いで勝るが地方の意地で並びかけても交わすまではいかない。

これらは馬場の真ん中からやや外で繰り広げられている。
その争いに、ぽっかり空いた内側から差を詰めるのが1頭。
フェートノーザンだ。

グングンと加速してくるフェートノーザン。
盛り返すグレートローマン。
粘るカウンテスアップ。
そして、ライフタテヤマとガーベラがようやくカウンテスアップを捉え、並びかけて残り100m・・・

中央のエース、ライフタテヤマは地力でカウンテスアップを競り落とし、ガーベラもそれに続く。
そこに迫ろうとするフェートノーザン。

残り50mで僅かにガーベラが先頭に立つが、ライフタテヤマも粘る。
やや脚色が鈍るカウンテスアップも粘りを見せるが、地元グレートローマンはそれを交わして先頭に迫る。

大激戦の中、ゴール。
砂だらけになった顔を袖で拭いつつ、澪がゴーグルを外す。
女帝ガーベラがレースを制し、ライフタテヤマが2着。
その差はクビで、3着はフェートノーザン。
ダート戦では常に上位に食い込んでいた地方勢だったが、今回は中央勢が撃退した形となった。

これでガーベラはJBCクラシックに続いての連勝。
古馬勢と戦っていける実力を示せたのだ。
そして、今年最後の戦い、東京大賞典に向かう事になる。

チャンピオンズカップと同じ日、阪神ではプチソレイユが出走していた。
ダート2000mの2勝クラス。
ここで彼女は裏開催のファンの度肝を抜くとんでもない競馬を見せた。

ゲートが開く手前で立ち上がり、まさかの大出遅れ。
阪神ダート2000mは最初は芝を走るが、行き脚もつかず他馬から大きく離された最後方を追走する羽目になる。
鞍上は栗東の若手・熊崎。
まあこれなら大敗でも言い訳になる、と彼が踏んでいたその瞬間にプチソレイユは銜を噛んでグーンと加速する。
前とのリードは一気に縮まる。
縮まるどころか4コーナー手前で先頭集団に並んでしまうと直線は突き放す一方。

「なんだこの馬!?」

自分でも意外な勝利で逆に戸惑う熊崎。
ただ仁藤厩舎の調教助手の松山は笑みを隠せずにいた。

「ようやく本気で走れるようになってきたからね」

1勝クラスを勝ってから3戦して勝ちの無かったプチソレイユだったが、前走の2着から様子が変わってきた。
デビューが遅れたのも体質的な弱さや腰の甘さがあって強い調教が出来なかったのだが、秋頃から強い調教もこなせるようになってきていた。

特にこの松山はタフでハードな調教が持論で、彼によって鍛えられたライデンやスターライトブルー、ガーベラも一流馬になっている。
反面、故障させる馬も多いのだが、鍛えて強くするのが仁藤厩舎の方針でもあるので、基本体質の弱い馬は彼が担当しない事もある。
逆に言えば、彼が担当していると言う事は、それだけ強い調教ができると言う事だ。
坂路でのハードな調教を使い出し、馬がガラリと変わった。
いや、持っていた潜在能力が開花したと言うべきか・・・
プチソレイユの今回の勝利は、そんな松山の調教があっての事だ。

仁藤が中京に出張していたため、阪神の出走馬の面倒は松山がまとめてみていた。

「すいません、なんかとんでもない競馬で」
「いやいや、よく勝たしてくれたし、あれがあの馬の力だよ」

松山と熊崎が握手を交わす。
こちらでも大きな収穫があった。


年末の2歳GT。
まず阪神ジュベナイルフィリーズはドウカンジョーがマックスビューティとコーセイの追撃を振り切り勝利。
そして次の週は朝日杯フューチュリティステークス。

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