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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 157

それに澪は笑ってしまう。
ガーベラが威嚇するのは実力馬が多い。
単純に自分の敵になりそうな馬を威嚇するので、意外と警戒すべき馬が分かる部分もある。

「ウチのガーベラ様はフェートノーザンが強いって言ってるわね」
「そりゃあ嬉しいね・・・でも、強いのが一杯いるからなぁ」

一杯と言いつつも、中滝の視線は一頭の馬に注がれていた。
視線の先はライフタテヤマ・・・
澪も中滝もライフタテヤマの抜群の調子の良さは気になっていた所だ。

「弱気にならない事ね・・・自分の馬を信じてあげて」
「ああ・・・リーディングジョッキーの言葉を信じて頑張るさ」

同期同士で差は出ても、同期は同期。
そう言い交わして号令のかかったゲートの方に向かったのだ。

ゲート入りで若干うるさいガーベラは大概後回し。
入れば比較的大人しくするのだが、入るまでは我儘言ってうるさいのも何時も通りだ。
ただこのうるさい所がある方がキッチリ走ってくれる。

ゲート入りでは一度はごねる。
これがいつものルーティン的なものだと澪は最近理解した。
一度イヤイヤした後、素直に入る。
女王様気質にツンデレ要素でも加わったのかと澪は思わず笑ってしまう。

「面白い馬やね」
「いつもですよ、いつも」

隣枠のグレートローマン鞍上、安堂が話しかけてくる。
彼はレース中でもこんなところがあるのは澪も理解済み。
野球のキャッチャーの囁き戦術みたいなところがある。

それに乱されてはいけないと気を引き締め、ゲートが開くと同時に飛び出す。
ガーベラは中々良いスタート。
先頭を切ったのは、予想外にカウンテスアップだった。

むしろ中央開催だから果敢に攻める。
名手的屋の出した答えがそれなのだろう。
だが、ダートでは屈指の先行力を持つカウンテスアップの果敢な逃げは、後続馬には中々厳しい展開になりそうだった。

2番手はリキサンパワー。
カウンテスアップが行くと読んだのか、積極的な仕掛けで2番手につけた。
その後ろにグレートローマンとフェートノーザン。
そこにライフタテヤマとノトパーソが続き、良いスタートは切ったもののガーベラはその後ろの集団の中にいた。

これはガーベラが行かなかったと言うより、先行勢が追ったと言うのがある。
これがガーベラ攻略法と言うか、カウンテスアップとリキサンパワーの勢いについて行ってしまった所があるのだろう。

ちょっと意外な展開だが、だからと言って慌てる程では無い。
中京競馬場はそこまで差し追いに不利と言う事も無かった。

なので結局は真ん中あたりというポジションに落ち着く。

カウンテスアップは軽快に逃げるが、常にリキサンパワーのプレッシャーが後ろからくる。
そのため楽な逃げとは言えないはず。
後ろの集団から澪はガーベラの動き出すタイミングを考える。
ただガーベラのほうもグレートローマンのプレッシャーを受けていてそう楽にはいかないだろう。

前方は3コーナー過ぎでリキサンパワーが一気に先頭に並びかけていった。

それを追いかけるようにフェートノーザンが動き、グレートローマンも続く。
しかしカウンテスアップもハナを譲らず、そのまま直線へと向かって行った。

直線でまず仕掛けたのは、グレートローマンとフェートノーザンだった。
追い上げてきたリキサンパワーの脚が止まると、それを交わしてカウンテスアップに並びかけていく。
必死に逃げるカウンテスアップも脚の衰えは無く、的屋の鞭に応えて2頭を二の足で突き放そうとする。

今年は少し調子が下降気味で大レースを取りこぼしているカウンテスアップ。
陣営も的屋もそれに歯痒い思いをしてきた。
だからこそ一つでも栄冠を取りたい・・・
その思いで必死に追い続ける。

そんなカウンテスアップにグレートローマンが再び盛り返して並びかける。
こちらも東海の帝王としてのプライドがあった。

そんな2頭に待ったとばかり・・・
外から2頭の馬が物凄い脚で駆け上がってくる。
中央のエース格のライフタテヤマ。
そしてフルダブルガーベラだ。

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