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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 156

3着、リュウノラモーヌ。
初めての古馬相手、国際GTということを考えれば悲観するような内容ではない。
ただ、シャロンとの勝負、それに元お手馬のシロノライデンに負けたのは澪にとっては悔しさが倍増するようなレースだった。

「よく頑張ったね」

愛美もラモーヌを労う。
馬にダメージは一切なく、ラモーヌは有馬記念に向かうことがレース後に決まった。

次の週は、チャンピオンズステークス。
数少ない中央開催のダートG1レースだ。

中央開催と言うだけあって、今回はライフタテヤマ、リキサンパワーと中央古馬の2大エースが揃い踏み。
そこに女帝フルダブルガーベラと地方を迎え撃つ体制は整っていた。

地方からは東海が地元のグレートローマンが参戦。
中京競馬場から程近い名古屋競馬場と笠松競馬場を主戦場としているだけに、中央開催と言えど地元であるかのようにファンも多い。
他にはカウンテスアップやアイランドハンターなどと言ったお馴染みのメンバーも参戦。
ただ、例年の中央対地方と言う構図よりも、誰が女帝ガーベラを止めるのかが焦点になっていた。

人気では当然のようにガーベラが一番人気。
2番人気はグレートローマンがほぼ地元と言うだけあって上がってきていた。
それだけではなく、関係者も口を揃えて『今年最高の出来』と言うぐらいであったから、この2番人気は当然であろう。

そこから人気はライフタテヤマ、リキサンパワー、カウンテスアップと続く。
人気が下がったカウンテスアップだが、こちらも好調をキープしていた。

12月に突入しただけあって冷たい風がコースに吹き荒ぶ。
真冬の空気。

「ガーベラ様、いつになくご機嫌ですな」
「暑いのが苦手だから今の時季はどんと来いって感じなんでしょ」
「なるほど」

澪と寛子がそんな会話を交わす。
ガーベラ自身は首を大きく上下させるいつもの雰囲気だがこれでも今は機嫌がいい方らしい。

中京ダート1800mは直線が長く、かつ急坂もあるが意外と逃げ先行馬が残りやすいという特徴がある。

ガーベラ自身はさほど位置取りに気を使わないタイプであるが、あえて言うなら瞬発力勝負はしたくない。
無論、水準以上の瞬発力で前走を制しているが、本来は瞬発力より勝負根性でレースを制していくタイプだ。
たまたまあそこにあの位置で瞬発力自慢の馬がいなかったから勝てたが、本来得意としない戦術を2回も使って勝てる程相手も甘く無いと思っている。

そんな澪が本馬場に出て、待避場で輪乗りをしてると、同期の中滝が馬を寄せてくる。
彼はこの秋にようやく条件戦を抜けて勢いのあるフェートノーザンに騎乗してG1初参戦だった。

「いやみんな凄いよね・・・落ち着いていて」

緊張気味の中滝。
初参戦だとみんなそうだろう。

「意外とアレよ・・・ダートだとメンバー変わらないから顔馴染み的なものだしね」
「ああ、障害戦みたいなものか」

中滝は障害競争の方でも騎乗していて、それなりの成績であった。
澪の方はデビューから『女の子がやるもんじゃない』と障害の方は乗せて貰ってないので全く経験が無いから分からない部分もある。

ある程度実績が出てきたり年齢を重ねた騎手の中には障害騎手免許を返上するものも出てくる。
澪はまだ「もしものときがあれば」という思いもあって返上はしていない。
ただ所属の仁藤調教師が乗せる気はないと明言しているので、おそらく出番はないだろう、とも思っている。

フェートノーザンは澪も以前同じレースで騎乗していて将来的にはいずれ重賞でも通用しそうな力のある馬だと思っていた。
父は南関東で走っていた外国産馬フェートメーカー、カウンテスアップも同じ父である。

澪は大して気にしていないが、ガーベラは隣りにいるフェートノーザンを威嚇しようと睨みつけている。
フェートノーザンの方はそれを気にする素振りもない。

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