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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 155

クシロキングは逃げ続ける。
その後ろ、アレミロードはぴったりとクシロキングをマークして離れない。
3番手集団のサクラユタカオーが若干手応えが怪しくなる。
その外にはジュサブローとミホシンザン。

そしてその後ろにトリプティク。
ジワリと馬群の中から先行集団をとらえにかかる。
後ろを行く澪にはシャロンの動くタイミングが分かった。

さらに後ろではウェイバリースターが動きを開始し、それについて行くのがラグビーボールとジュピターアイランド。
シロノライデンはまだ動かない。

澪が乗ってた時も動き出しの遅いシロノライデンだったが、今回も更に遅い。
大欅が過ぎ、各馬動き出しても追走するだけで、直線入口でも最後方だった。

その直線入口。
アレミロードがクシロキングを交わす。
もうクシロキングは一杯・・・
いかにスタミナ豊富な馬であれど、常にプレッシャーを受け続けペースを落とせなかったから仕方がない部分もある。

そしてサクラユタカオーやミホシンザンも追うが決め手が無い。
そんな所に後続馬が襲い掛かる。
まずアレミロードに挑んだのはトリプティクだった。
残り400mで早くもアレミロードに半馬身まで迫り抜かそうとする。
その横・・・
外側に迫る馬。
リュウノラモーヌだった。
トリプティクがアレミロードを交わすと、ラモーヌも交わして馬体を合わす。
残りは300mあまり。
ここから叩き合い上等とばかりに馬体を合わせて追う澪。
それに対して、シャロンも負けじと必死に追う。

だが、そんなマッチレースは待てとばかりに飛んできたのは、ジュピターアイランドとラグビーボールだった。
強烈な末脚でグングン差を詰めてきて後200m。

だが、ラモーヌもトリプティクも負けていない。
どちらもが追撃してくる馬を寄せ付けぬ走り・・・
残り僅かまで迫った2頭の脚が止まったかに見えるぐらいの二の脚を使って追撃を凌いだのだ。

残り100m。
2頭のマッチレースの様相になっていく。
ジュピターアイランドとラグビーボールの追撃も2馬身差から縮まらない。
誰もが勝負あったと思ったその時、大外から駆け上がってくる馬・・・
豪快な鬼脚で駆け上がってきたのは、シロノライデンだ。
やはりと言うか、最後まで溜めていた力を一気に解放し、凄まじい勢いで駆け上がってくる。
追い上げるシロノライデンはジュピターアイランドとラグビーボールを交わし、ラモーヌとトリプティクに迫る。

ラモーヌとトリプティクにそれを見る余裕は無い。
必死に追うが、その差は無い。
殆ど並んだままのデットヒート・・・
澪もシャロンも己のプライドを賭け、必死の形相で追い続けていた。

そこに割って入るかのようなシロノライデン。
天才に導かれ、直線入口で最後方から大外に出しての加速。
爆発的な加速で牛蒡抜きして、ラモーヌとトリプティクに並びかけた所でゴールだったのだ。

3頭が内中外まったく並んだところがゴール板の前。
鼻面もまったく合っているようにターフビジョンの映像では見えて、満員の観衆で埋め尽くされたスタンドがざわめいた。

当事者たちの表情。
シャロンは憮然、澪は天を仰いで苦笑い。
そして笑いが止まらないといった感じの田沢。

掲示板に表示されたのは・・・
一着がシロノライデン。
クビ差で外からきっちり差し切ったのだ。

そしてトリプティクが2着。
ラモーヌが3着。
その着差はハナ・・・
僅差であっても、ラモーヌにとっては初めての敗戦となったのだ。


検量所に入ってリプレイをシャロンと並んで見る。
直線入口で遠心力と共に大外に振った田沢が馬場の良い所を走らせて来ている。
その振るタイミングと言い、追い出しのタイミングと言い、反応と加速の遅いシロノライデンを熟知している仕掛けに思わず溜息が漏れる。
コンビ2戦目にして完全にシロノライデンを自分のモノにして勝たせるとは・・・
天才田沢恐るべしであった。

その田沢は勝利インタビューに答えている。

「まあ、あそこはババッと振って、グイッとやったらグーンと来てパァーッですわ」

相変わらず意味不明で女性記者が困惑した顔をしていた。

「・・・何て言ってるの?」
「ごめん・・・理解不能なの」

日本語を随分覚えたシャロンだが、当然理解できていない。
無論、聞かれた澪も理解不能なのだが。

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